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原爆症認定集団訴訟 東京第1次訴訟 東京高裁判決を受けての申入書

2009年5月28日

厚生労働大臣 舛添要一殿

  • 日本原水爆被害者団体協議会
  • 原爆症認定集団訴訟全国原告団
  • 原爆症認定集団訴訟全国弁護団連絡会

 本日、東京高等裁判所は、原爆症認定集団訴訟東京第一次訴訟に関し、未認定原告10名及び認定原告1名の未認定疾病について、1名を除いて却下処分を取り消す勝訴判決を言い渡しました。
 私たちは、2009年5月15日の大阪高裁判決を踏まえて、同日、大臣に対して以下の申し入れを行い、東京高裁判決が言い渡される本日までにご回答をいただくことを要請いたしました。
 本日の東京高裁判決を踏まえて、大臣に対して再度申し入れを行いますとともに、直ちに大臣によるご決断をいただきたく要請いたします。

申し入れの趣旨

 私たちは、厚生労働大臣が被爆者・原告らに謝罪したうえで、下記の内容で全国の原爆症認定集団訴訟を解決し、認定基準の再改定を行うことを要請します。

1 原告全員救済による訴訟の全面解決
(1) 裁判所で勝訴している原告を直ちに認定すること。
(2) 未判決あるいは敗訴の原告についても、被爆者救済の立場で対応すること。
2 司法判断に沿った認定基準の改定
(1) 肝機能障害と甲状腺機能障害を積極認定に入れること。
(2) 被爆者のがんは幅広く原爆症と認定すること。
(3) 総合判断の疾病の認定についても、これまでの判決にしたがい「疑わしきは被爆者の利益に」の立場で認定にのぞむこと。

申し入れの理由

 私たちが原爆症認定却下処分の取り消しを求めて集団で提訴してからすでに6年を経過しておりますが、現在まですでに13地裁、5高裁で原告勝訴の判決が下されています。また、この裁判の過程で、厚生労働省はようやく認定基準の見直しをおこない、昨年4月から「新しい審査の方針」による原爆症認定審査が始まりました。しかし、この見直しによっても、勝訴原告が認定されない、8000名近い申請者が放置される等、いまだに多くの問題が残されており、司法と行政の乖離は依然として解決されておりません。

 こうしたなか、本日、東京高等裁判所第4民事部(稲田龍樹裁判長)は、原爆症認定集団訴訟東京第一次訴訟に関し、未認定原告10名及び認定原告1名の未認定疾病について、1名を除いて却下処分を取り消す、原告被爆者の勝訴判決を言い渡しました。

 本日の東京高等裁判所判決は、これまでの17ヶ所の地裁・高裁判決を集大成したものです。その中で裁判所は、被爆者援護法の前文をふまえて「単なる社会保障的観点に基づくものではなく、戦争遂行主体であった国の国家補償的措置として行われるものである。」と判示しました。起因性の判断基準についても、対立する科学的知見がある場合には、厳密な学問的な意味における真偽の見極めではなく、それを前提として全証拠を総合して判断すると判示し、さらに「審査の方針」には、欠陥があり、判断基準それ自体に合理性を欠くと判示しました。また、肝機能障害及び甲状腺機能低下症の放射線起因性を明快に肯定しました。さらに、4キロメートル、5キロメートル及び120時間以降の入市のがんについても放射線起因性を認めました。

 河村建夫官房長官は、かねてから「東京高裁判決が一括解決のタイムリミット」と述べております。また厚生労働省も、「原爆症認定集団訴訟と認定基準の改定に関して、5月末までに予定されている大阪高裁判決、東京高裁判決などの司法判断を踏まえて最終的な判断をする」と明言しております。
 13の地裁判決、仙台高裁判決、第一次大阪高裁判決、千葉事件東京高裁判決、第二次大阪高裁判決、そして、本日の東京高裁判決によって、既に司法の判断は不動のものとなりました。被爆者全員救済に向けて迷う必要はありません。

 本年4月5日、アメリカのオバマ大統領は、プラハにおいて、核兵器を使用した国としての道義的責任にふれながら、核兵器の無い世界に向けて行動することを明言しました。被爆国日本としては、病気や差別とたたかいながら身をもって原爆被害を告発した集団訴訟の原告・被爆者の声をうけとめ、被爆の実態に即した原爆症認定制度を確立し、世界に核兵器の残虐性を示すことが求められています。

 集団訴訟の提訴以来すでに68名の原告が亡くなっており、病弱な被爆者に裁判を重ねる時間はありません。今こそ、原爆症認定集団訴訟の全面解決のときです。ここに、原告の全員救済と認定基準の再改定を行うことを強く求めるものです。

 大臣のご決断を要請します。

以上