被爆者相談所および法人事務所
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原爆症認定集団訴訟 仙台高裁判決についての声明

2008年5月28日

  • 宮城県原爆被害者の会
  • 原爆症認定集団訴訟仙台弁護団
  • 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)
  • 原爆症認定集団訴訟全国弁護団連絡会
  • 原爆症認定集団訴訟を支援する全国ネットワーク

1 本日、仙台高等裁判所第3民事部(井上稔裁判長)は、原爆症認定仙台集団訴訟に関して、第1審原告2名について、厚生労働大臣の認定申請却下処分を取り消す旨の原判決を維持し、第1審原告ら勝訴の判決を言い渡した。

2 (1)この判決は、原爆症認定集団訴訟における、しかも「新しい審査の方針」が出された直後の高等裁判所の判決である。
 この判決では、「新しい審査の基準」が出されたこともあり、第1審原告らの放射線起因性については、これを明確に認める判断を行った。
 つまり同判決は、旧審査方針のDS86や原因確率の疑問点を指摘した上で、「原因確率の数値には、このような問題点が内在しているか、申請疾病の原因確率が低い数値であることのみをもって、放射線起因性を端的に否定すべきではなく、既往症、生活環境等も勘案して、放射線起因性を判断すべきであるのに、医療分科会は、申請疾病に関する原因確率を所与のものとして扱い、これを形式的に適用して認定申請の放射線起因性を否定する審査をしたもの」と断じた。
 (2)また、本件においては、「要医療性」が最大の争点になった。
 本件判決は、癌切除後の後障害、さらには再発予防のための検査についても「要医療性」を認めた。つまり、「半年に1回程度の定期検査であり、積極的な医療行為が行われていないとしても、要医療性を是認するのが相当である」と判断した。これは、癌切除後の後遺障害に苦しみ、癌の発生やその再発を長年にわたって恐れながら生活をしていた被爆者の実態に添った判決である。同時に、本来ならば原爆症と認定されるべきにもかかわらず、これまでの被爆者切捨て政策によって、原爆症の認定を諦めてきていた被爆者の救済に道を拓くものとして、高く評価することができる。

3 さらに、仙台高裁判決は、従来の判決の水準を一歩進めて、「1審原告波多野の場合には、切除後障害の存在、放射線起因性及び要医療性は証拠上明らかに認められるにもかかわらず、1審被告大臣は、当審においてもこれを争う姿勢を維持していたことは、被爆者援護法の制定の経緯、同法前文に示された救済の精神に照らすと、いささか柔軟な対応に欠けていたものといわざるをえない」と指摘した。つまり、本日の高等裁判所の判決によって、これまでの国の行ってきた被爆者行政の誤りがさらに明らかとなった。
 国および厚労省は、上訴を断念し、直ちにこれまでの誤った被爆者行政を改め、現在、各地で行われている集団認定訴訟を直ちに全面的に解決すべきである。
 そして、すべての被爆者を救済するとともに、被爆者の悲願である核兵器廃絶に向けて努力することを求めるものである。