原爆症認定の「新方針」 何が改善され、何が残されたのか
2008年4月から厚生労働省は、「新しい審査の方針」を使って原爆症認定の審査を開始。この中で集団訴訟の原告も次つぎ認定されています。6月、仙台・大阪高裁の判決に政府が上告を断念したこともあり、原爆症認定制度の問い合わせが続いています。「東友」2008年4月号(282号)でも解説を掲載しましたが、その後わかってきたこともふくめ、あらためて「新方針」について説明します。
原爆症認定とは
原爆症に認定されると毎月13万7430円の「医療特別手当」が支給され、認定された疾患の治療費は全額国が負担します。原爆症と認定された被爆者に交付される「認定書」には、厚生労働大臣の氏名が記入され、大臣の公印が押されています。この制度が国・厚労省が公式に被爆者の病気を「原爆症」と認めるただ一つの制度だからです。
「起因性」要件のみ緩和された新方針
被爆者健康手帳の審査や諸手当の審査は、すべて都道府県などが担当していますが、「原爆症認定」だけは厚労省内につくられた「原子爆弾被爆者医療分科会」が審査しています。国が原爆症認定で求めている要件は次の2点です。
- 起因性:被爆者の罹った病気やケガが原爆の影響によると判断できること。
- 要医療性:原爆の影響による病気やケガ、ケロイドが、治療の必要な状態にあるか、治癒能力が放射線の影響を受けていると判断できること。
今回、厚労省が改めたのは、「起因性」の基準だけです。例えば、2008年3月までは被爆時15歳くらいの男性が胃ガンにかかった場合、直接被爆1.2キロ程度までしか認めてきませんでしたが、被爆距離や滞在時間、特定疾病などの条件を一定緩和し「積極的に認定する」ことにしたのです。「原因確率」の使用については自動認定の判断にのみ使うと言明しています。
注意が必要なのは、原爆症認定のもう一つの要件である「要医療性」は何も変わっていないことです。
仙台高裁は26年前の胃ガンの後遺症に苦しむ被爆者を原爆症と認め、大阪高裁も厳しい急性症状や身体の不調で長年苦しんできた入市被爆者2人の「貧血」と「椎骨脳底動脈循環不全(めまい)」を原爆症と認めました。厚労省は上告を断念したので、この原告たちは原爆症と認定されました。
6月16日の被爆者医療分科会で厚労省の西山正徳健康局長は、「高裁が認めた内容にそって審査をすすめてほしい」と発言しましたが、「却下」の基準はまったく示されていません。
申請書類の準備は万全の構えで
申請には、(1)認定申請書、(2)意見書、(3)健康診断個人票(精密検査用)、(4)医療特別手当認定申請書のほか、原爆が病気などの原因になっていることを証明する申請者の陳述書、ガンの場合は「病理検査」という確かにガン細胞があったという証明になる検査結果票や「手術記録」のコピーなど、複数の書類が必要です。
東友会は、申請書類一式と意見書などを医師にお願いする場合の「手紙」、記入見本などを用意して、希望する方に郵送しています。