原爆症認定集団訴訟 近畿第2次訴訟 大阪高裁判決についての声明
2009年5月15日
- 原爆症認定集団訴訟近畿原告団
- 原爆症認定集団訴訟近畿弁護団
- 原爆症認定集団訴訟支援近畿ネットワーク
- 原爆症認定集団訴訟全国弁護団連絡会
- 日本原水爆被害者団体協議会
1 はじめに
本日、大阪高等裁判所第7民事部(永井ユタカ裁判長)は、原爆症認定集団訴訟(近畿2次)につき、厚生労働大臣の原爆症認定却下処分の誤りを指摘し、原告のほとんどを原爆症と認める判決を言い渡した。
2 判決の評価 総論について
判決は、原爆症認定の判断ついて、「DS方式は、理論と実験による仮説であり、被爆者の実際の被曝事実を取り込んだものではないから、被曝線量の総量を推定する手法としては、経験的適合性を確保したものあるとまではいえない難点がある」とした。これは、これまで積み重ねられてきた16の判決に引き続いて、DS86の問題点を指摘したものである。
厚生労働省は、平成20年4月から「新しい審査の方針」により原告の認定見直し作業を進めていたが、本件原告のうち5名については頑なに認定を拒み続けた。
しかし、今回の判決は、5名の原告のうち4名を原爆症と認めたことで、「新しい審査の方針」の不備を明らかにしたものである。
3 判決の評価 各論について
判決は、厚生労働省が頑なに認定を拒み続けた
- 「体内異物(ガラス片残留)」
- 「入市被爆者の心筋梗塞」
- 「肝硬変(肝機能障害)」
を原爆症と認めた。今回の判決によりその認定手法に根本的な転換を迫られることは明らかである。
救護被爆者の原告森は、残念ながら原爆症と認められなかった。しかし、判決は、救護被爆者について人体に影響を及ぼす程度の原爆放射線を浴びた可能性を認めている。原告森は、「救護被爆者は原爆症と認定されるはずがない」という現状を打ち破るために困難な裁判に立ち上がり、救護被爆者に原爆症認定への道を切り開いたのである。
これらのことは、厚生労働省が原爆症認定審査に用いてきた旧基準は勿論、昨年4月から適用している「新しい審査の方針」、さらにはこれを運用する審査会が、被爆者援護法の理念にそぐわず、救護被爆者を含め根本的に改められなければならないことを明らかにしたものである。
4 国家賠償について
判決が、審査において、原因確率10%を境にして認定と却下を区分した事実を認めながら、何ら根拠を示さぬまま、機械的審査の結果によるものと認めず、国家賠償責任を棄却したのは極めて不当である。
5 結びに
被爆から64年、日本国政府は被爆者に対する戦争責任・国家補償責任を未だ果たしていない。国は、判決に上告せずに従うべきである。そして、直ちに原告全員の認定を行うとともに、誤った「新しい審査の方針」や審査会の委員の更迭を含めた原爆症認定行政の根本的改革に努め、被爆者に対する全面的な補償を含む、真の援護行政を行うべきである。
本件集団訴訟は、一人一人の被爆者の「二度と核兵器を使ってはならない」との思いにより支えられている。被爆者は、自らをさらし、核兵器の非人道性を訴えているのである。国は、6年にも及ぶこの集団訴訟の結果を真摯に受け止めるべきである。
世界が核兵器の残虐性と愚かさにようやく気づき、核兵器廃絶に向かう大きな流れが生じつつある今こそ、政府は、原爆被爆者が世界人類に向けて発した訴えを、被爆国・日本の声として世界に発信すべきである。
以上