原爆症認定集団訴訟 東京第3次訴訟 認定の範囲広げる勝訴判決
「新しい審査の方針」でも非認定の12人が勝訴
2011年7月5日、原爆症認定集団訴訟の東京第3次訴訟の原告24人に対する判決が東京地裁で言い渡され、16人のうち12人が勝訴しました。
今回勝訴した12人はすべて、国が被爆線量が少ないこと、放射線との因果関係が認められない疾患であるなどの理由をつけて、「新しい審査の方針」でも認定しなかった人びと。指定病名にされていない甲状腺機能亢進症は広島4キロ、脳梗塞では直接被爆は3.5キロまで、入市被爆は3日後まで広げ、現在はまったく認定されていない入市被爆者のC型肝炎、さらに、はじめて2.3キロ被爆の大動脈瘤も認定。これまでの集団訴訟判決をさらに広げる内容になりました。
しかし、4人の原告については被爆の程度や喫煙歴を理由に敗訴になりました。
結果 | 原告名 | 性別 | 認定申請病名 | 被爆状況 |
---|---|---|---|---|
勝訴 | 山崎恵美子 | 女 | 肝機能障害(C型) | 広島入市 8月8日 |
石田順子 | 女 | 狭心症 | 広島直爆2.0キロメートル | |
濱本和子 | 女 | 脳梗塞 | 広島入市 8月9日 | |
頼金昭子(死亡) | 女 | 肺ガン | 広島入市 8月10日 | |
田村正夫 | 男 | 胸部大動脈瘤 | 長崎直爆2.3キロメートル | |
栗原澄子 | 女 | 陳旧性心筋梗塞 | 長崎直爆2.4キロメートル | |
高島能仁(死亡) | 男 | 陳旧性心筋梗塞 | 広島直爆2.0キロメートル | |
神戸美和子 | 女 | 甲状腺機能亢進症 | 広島直爆4.0キロメートル | |
宮田知都子(死亡) | 女 | 脳梗塞 | 広島直爆2.2キロメートル | |
小林ツキ | 女 | 脳梗塞 | 長崎直爆2.4キロメートル | |
畑谷由江 | 女 | 脳梗塞後遺症 | 広島直爆1.5キロメートル | |
塩田喜久雄 | 男 | 脳梗塞 | 長崎直爆3.5キロメートル | |
敗訴 | 森繁喜(死亡) | 男 | 脳梗塞 | 長崎直爆3.0キロメートル海上 |
中山鈴子 | 女 | 急性心筋梗塞 | 長崎直爆4.1キロメートル | |
井上浄 | 男 | 前立腺ガン | 広島入市 8月20日 | |
佐々木正己 | 男 | 悪性リンパ腫 | 長崎入市 8月18日 救援8月15日から | |
棄却(提訴後認定) | 高橋一(死亡) | 男 | 肺ガン | 広島直爆2.0キロメートル |
豊田嘉幸(死亡) | 男 | 心筋梗塞 | 長崎直爆1.3キロメートル | |
山本知子(死亡) | 女 | 転移性脳腫瘍・肺ガン | 広島入市 8月6日 | |
頼金一司 | 男 | 前立腺ガン | 広島入市 8月7日 | |
吉富靜江 | 女 | 胃ガン | 長崎直爆2.8キロメートル | |
水野惠太 | 男 | 肺ガン | 広島直爆2.3キロメートル | |
山口幸七(死亡) | 男 | 非ホジキン悪性リンパ腫 | 広島入市 8月7日 | |
壹岐弘(死亡) | 男 | 慢性骨髄単球性白血病 | 広島入市 8月7日 |
被爆者の思いをもっと伝えなければ
この日、主婦会館で東友会が主催した報告集会には、3人の原告と原告の家族3人が参加。裁判の遅れから判決を聞けなかった妻の遺影を抱いて参加した宮田裕之さんは、「多くの被爆者、支援のみなさんのご活躍とご支援に勇気と希望をいただいた」と心情を吐露しました。
これまで第1次訴訟の時期から「原告の顔」の一人といわれるほど活動をつづけてきた畑谷由江さんは「被爆の苦しみはこれで終わったわけではない。被爆者の思いをもっともっと訴えなければと決意している」と語りました。
これで、2003年5月から東友会が弁護団や医師団、支援者とともにすすめてきた東京での集団訴訟は8年の歳月をへて終結し、82人の原告のうち9割が認定されましたが、この間3分の2にあたる55人が死去しました。