被爆者相談所および法人事務所
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原爆症認定集団訴訟 東京第3次訴訟 東京地裁判決についての声明

2011年7月5日

  • 原爆症認定集団訴訟東京原告団
  • 原爆症認定集団訴訟東京弁護団
  • 原爆症認定集団訴訟全国弁護団連絡会
  • 東京都原爆被害者団体協議会(東友会)
  • 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)
  • 原爆裁判の勝利をめざす東京の会(東京おりづるネット)
  • 原爆症認定集団訴訟を支援する全国ネットワーク
  1.  本日、東京地方裁判所民事3部(八木一洋裁判長)は、原爆症認定集団訴訟東京第3次訴訟に関し、未認定原告16名のうち4名を除いて、却下処分を取り消す勝訴判決を言い渡した。
  2.  本日の東京地裁判決は、被爆者援護法が「実質的には国家補償的配慮をも制度の根底にすえて」いると判示し、加えて、被爆者の高齢化という事実にも着目し、被ばくによる健康被害と高齢化による健康状態の低下が競合する状況であることを前提として「同法の目的及び趣旨を損なうことのないように」認定制度を運用すべきとした。
     そして、疾病論につき、「訴訟における原爆放射線起因性の証明の有無の判断の際には」、原爆被害の未解明性と科学の限界を指摘した上で、「原爆放射線の影響が及んでいると疑われ、それに沿う相応の研究の成果が存在している疾病については」積極的に認定すべきとして、積極認定疾病であるがん(1名)、心筋梗塞(2名)、肝機能障害(C型)(1名)はもちろん、集団訴訟の各判決が認めてきた脳梗塞(5名)、狭心症(2名)、甲状腺機能亢進症(1名)に加え、集団訴訟で初めて、胸部大動脈瘤(1名)についても放射線起因性を認めた(1名は疾病が重複している)。
     被爆態様についても、国が「低線量域については放射線起因性を裏付ける知見が無い」として争った心筋梗塞について広く認容し、狭心症、脳梗塞についても、近距離に限定することなく放射線起因性を認めた点は高く評価できる。
     また、国が、喫煙、飲酒さらに高血圧、高脂血症、加齢、食生活等ありとあらゆる他原因の存在をことあげして放射線起因性を争ったのに対し、かかるリスク要因のみで切り捨てることなく、総合評価が必要であるとして国の主張を退けた点は大きな前進である。
     さらに、被爆者の証言に変遷があるとの国の反論について、当時の差別偏見から正直に事実を述べられないという被爆者の心情に配慮して、その変遷を問題にしなかった。
     ただし、残念ながら4名の原告については訴えが棄却されたが、被爆者援護法の趣旨に照らしてもまったく誤った解釈というほかなく、極めて遺憾である。
  3.  2003年に全国の被爆者が提起した原爆症認定集団訴訟においては、被爆者切り捨ての認定行政を断罪する判決が積み重ねられ、2008年3月、原因確率を廃して「より被爆者救済の立場に立ち」「被爆の実態に一層即したものとする」として「新しい審査の方針」が策定された。さらに、2009年8月6日には、麻生太郎首相(当時)と日本被団協の間で「原爆症認定集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認書」が締結され、一連の司法判断を国として厳粛に受け止め陳謝し、一人でも多くの被爆者が迅速に認定されるよう努力する旨の内閣官房長官談話が発せられた。
     しかし、昨年厚労省が公表した資料によれば、「新しい審査の方針」のもとで積極認定の対象とされている疾病でさえしきい値による切り捨てが行われ、非がん疾患については却下を原則とするかのような異常な運用が行われている。
     本日の東京地裁の判決は、司法判断を無視し、確認書と内閣官房長官談話をも無視する国・厚生労働省の姿勢を厳しく断罪するものである。国は直ちに審査基準の再度の改訂を行い、さらに援護法の改正を急がなければならない。
  4.  本日の判決は、東京の原爆症認定集団訴訟最後の判決である。2003年以来、東京の原告と被爆者は、命をかけて被爆の実相を明らかにし、認定制度の抜本的改訂を目指してたたかってきた。それは、ひとえに、自らの体験を語り核兵器の残虐性を告発することが「ふたたびヒロシマ・ナガサキをつくらせない」ことにつながるとの想いからであった。
     私たちは、この集団訴訟の成果を生かして、国家補償の確立と核兵器の廃絶を目指して、今後も被爆者とともに闘う所存である。

以上