原爆症認定集団訴訟 近畿第3次訴訟 大阪地裁判決骨子 2011年12月21日
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- 放射線起因性の判断にあたっては、当該疾病等が発症するに至った医学的、病理学的機序を直接証明することを求めるのではなく,当該被爆者の原爆による放射線被曝の程度と、統計学的・疫学的知見等に基づく申請疾病等と放射線被曝の関連性の有無及び程度とを中心的な考慮要素としつつ,これに当該疾病等の具体的症状やその症状の推移、その他の疾病に係る病歴(既往歴)、当該疾病等に係る他の原因(危険因子)の有無及び程度等を総合的に考慮して,原爆放射線被曝の事実が当該申請に係る疾病等の発症又は治癒能力の低下を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性が認められるか否かを経験則に照らして判断するのが相当である。そして、審査の方針(当時)により算定される被曝線量は、あくまでも一応の目安とするにとどめるのが相当であり、被爆者の被曝線量を評価するに当たっては、当該被爆者の被爆状況、被爆後の行動、活動内容、被爆後に生じた症状等に鑑み、様々な形態での外部被曝及び内部被曝の可能性がないかどうかを十分に考慮する必要があるというべきである。
- 原告小山の申請疾病(胃腺腫)に関しては、原爆症認定申請の時点において、特段の治療行為を伴わない経過観察が必要とされていたにすぎず、当該疾病につき悪化又は再発の可能性が高いなどといった特段の事情も認められないから、「現に医療を要する状態にある」との要件(要医療性)が認められず、同原告に対する却下処分は適法である。
承継前原告小林、原告高松及び原告黒田の各申請疾病(多発性骨髄腫、右眼動脈閉塞症、肺がん)については、放射線起因性及び要医療性が認められ、上記原告らに対する却下処分はいずれも違法である。また、原告藤井の申請疾病のうち、慢性肝炎については放射線起因性及び要医療性が認められるが、変形性腰椎症については放射線起因性が認められないので、同原告に対する却下処分は慢性肝炎に係る部分に限り違法である。 - 本件においては、疾病・障害認定審査会の答申意見が関係資料に照らし明らかに誤りであるなど、厚生労働大臣がその意見を尊重すべきではない特段の事情が存在したとまでは認められず、また、行政手続法5条1項(審査基準の設定)及び同法8条(理由の提示)違反も認められないから、厚生労働大臣が却下処分を行ったことが国家賠償法上違法であるとは認められない。