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原爆症認定集団訴訟名古屋高裁判決についての声明

2010年3月11日

  • 愛知県原水爆被災者団体協議会(愛友会)
  • 原爆症認定集団訴訟愛知原告団
  • 原爆症認定集団訴訟愛知弁護団

 本日名古屋高等裁判所民事第3部は、原爆症認定集団訴訟愛知訴訟に関して、1審で放射線起因性を否定された原告2名について、中村昭子については控訴を認容して放射線起因性を認め、森敏夫については控訴を棄却する判決を下した。
 愛知原告4名は、全国で裁判に立ち上がった306名の被爆者とともに、原爆症認定集団訴訟を通じて遠距離入市被爆者にも多数の急性症状が発現していたことなどの被爆の実相に基づき、原因確率に依拠する国の認定基準が被爆の実態から乖離し、被爆者救済の立場に立っていないことを明らかにしてきた。このような原告らの主張は、集団訴訟を通じて全国の裁判所から認められ、2008年4月には原因確率に基づく認定基準を廃止するに追い込み、原爆症と認定される被爆者が飛躍的に増加するという成果を上げた。また、昨年8月には内閣総理大臣と日本被団協との問で原爆症認定集団訴訟の解決に係る基本方針に関する確認書が取り交わされ、昨年12月には確認書に基づく集団訴訟解決支援基金法の成立も勝ち取ってきた。
 しかし、今日もなお、裁判所による放射線起因性認定の水準と行政の認定の水準には乖離があり、また国の認定基準の運用面でも問題が残されている。
  愛知訴訟においても、1審で敗訴した原告を中心に、1審判決後、改めて原告らの被爆直後の状況、その後の健康被害、さらに新しい知見に基づく科学的な主張を補充してきた。名古屋高裁が、1名について1審判決を取消し、放射線起因性を認めたことは、現在の国の原爆症認定行政がなお裁判所から見て問題があることを明らかにしたものである。長妻厚生労働大臣は、本年1月の被爆者らとの定期協議の場で、認定基準の再改訂ではなく被爆者援護法改正による対応を表明したが、名古屋高裁判決が白内障についてしきい値がないことを明言し、老人性白内障についても放射線の影響が認められるとし、3.1キロで被爆した中村について放射線起因性を認めたことは、新しい審査の方針の下での白内障の認定の現状に対する批判ともなっており、現行法の下での正しい認定行政の確立の課題を避けることはできない。
 また、本判決によっても認定されなかった森については、当該疾病と放射線との関連性について知見が充分でないことが放射線起因性を否定する主要な理由とされているが、放射線影響が未解明であること踏まえてさらにきめ細かな研究を積み重ねることが要請される。
 我々は、集団訴訟の成果の上に立って、原爆症認定行政が真に被爆者救済の立場に立つことを求める活動を続けるとともに、唯一に被爆国である日本政府が被爆の実相を世界に訴え、核兵器のない世界を実現する先頭に立つことを強く求めるものである。

以上