被爆者相談所および法人事務所
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原爆症認定集団訴訟 東京1次訴訟 地裁判決についての声明

2007(平成19)年3月22日

  • 原爆症認定集団訴訟東京原告団
  • 原爆症認定集団訴訟東京弁護団
  • 原爆症認定集団訴訟全国弁護団連絡会
  • 東京都原爆被害者団体協議会(東友会)
  • 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)
  • 原爆裁判の勝利をめざす東京の会(東京おりづるネット)
  • 原爆症認定集団訴訟を支援する全国ネットワーク

1 東京地方裁判所民事第3部(鶴岡稔彦裁判長)は、本日、原告ら30名中入市・遠距離被爆者を含む21名について、厚生労働大臣の原爆症認定申請却下処分を取り消す、原告勝訴の判決を言い渡した。

2 判決は、厚生労働省が「科学的」と称して、2001年以降用いてきたDS86や原因確率論を柱とする「審査の方針」について、
(1) 線量推定方式であるDS86、DS02は、「評価結果に限界があり計算値を超える被爆が生じている可能性がないと断定してしまうことはできない」、「急性症状等が生じていると認められる事例が存在するのであれば、その事実を直視すべきであって、それがDS86による線量評価の結果と矛盾するからといってDS86の評価こそが正しいと断定することはできない」、
(2) 残留放射能、放射性降下物、誘導放射能については、「広島原爆、長崎原爆とも、誘導放射能及び放射性降下物について十分な実測値が得られていない。」、内部被曝について、「ガンマ線及び中性子線以外に、アルファ線及びベータ線が影響すること、外部被爆と比べ至近距離からの被曝となり人体への影響が大きいことを理論的に否定し去ることができない」、
(3) 原因確率論の合理性については、「原因確率に基づく判断にも一定の限界があることは否定できないのであるから、特に、原因確率が低いとされた事例に関しては、これを機械的に当てはめて放射線起因性を否定してしまうことは相当ではなく、個々の被爆者の個別的事情を踏まえた判断をする必要がある」、
(4) 放射線起因性の判断手法について、「科学的知見にも一定の限界が存するのであるから、科学的根拠の存在を余りに厳密に求めることは、被爆者の救済を目的とする法の趣旨に沿わない」、
 との判断を示し、これまでの厚生労働省の認定行政が、原爆被害の実態を正しく反映せず、法の趣旨に反するものであることを明確に認めた。

3 一方、判決は9名の原告について、その請求を棄却した。裁判所の認定は、被爆地点、入市の日時や、急性症状の存否等の原告側主張を、事実認定においてこれを斥けたものであり、その点はきわめて不当であり到底納得できない。

4 国の原爆症認定行政の誤りは、これまでも、最高裁、大阪高裁、東京高裁をはじめ、全国11の裁判所で厳しく指摘されてきた。ところが、国は司法判断を無視し、不毛の「科学論争」を蒸し返すだけで、自らの認定基準を改めようとしなかった。そして、この間、認定すべき多数の被爆者を切り捨ててきた。

5 私たちは、今こそ次のことを直ちに実現するよう強く求める。

  1. 国は裁判所の判断を尊重し、控訴を断念せよ。
  2. 現在の審査の方針を根本的に改め、被爆者を早期に救済せよ。
  3. 厚生労働大臣は、被爆者の意見を聞くための協議の場を設定せよ。

以上