原爆症認定集団訴訟 大阪地裁判決に国が控訴
原告・被爆者らはただちに抗議
原爆症認定集団訴訟で2006年5月12日に大阪地裁が下した「全員勝訴」の画期的な判決は、全国の被爆者と運動に携わるすべての人びとに勇気と確信を与えました。しかし、国・厚生労働省は5月22日、この判決を不服として大阪高裁に控訴しました。
「控訴するな」の声全国から厚労省に
判決後の15日から厚労省前では「厚生労働大臣は控訴するな」の要求運動が連日つづきました。22日には弁護団が全国からかけつけ、被爆者・支援者とともに「にんげんをかえせ」「国は判決に従え」と横幕を掲げ、座り込みました。同日朝には、原爆症認定を審査する医療分科会が開かれることをキャッチ。審査会会場前に詰めかけ、審査委員に「認定制度を抜本的に改めよ」と申し入れました。
国はこっそり控訴し、従来の審査方針を確認
ところが厚労省は、大阪地裁判決については従来どおりの「審査の方針」で審査をおこなうことを医療分科会に確認させ、記者団にも知らせないままこっそりと控訴しました。
医療分科会で確認したことは「国際的に評価されてない論文などを採用している」「高度の蓋然性が証明されていない」「個別審査は科学的、総合的におこなっている」というものでした。
国会でも取り上げ各党も対策に本腰
6月2日の衆院厚生労働委員会では、共産党の高橋千鶴子議員の質問に答えて川崎二郎厚生労働大臣が、「判決は、医学や放射線学上の理解と異なる」「高度の蓋然性が証明されていない」「高裁でしっかりした論議をおこなう」などと答えました。
これにたいして日本被団協、弁護団は「厚労省は、被爆者の脱毛を栄養が悪かったからだとか、血性下痢があったのは衛生状態が良くなかったからだといってきた。こんな被爆の実態をみていない非科学的な主張だから8連敗した。そのことへの反省が全くない」「裁判引き延ばしで被爆者が死に絶えるのを待っているとしか思えない」ときびしく反論しています。
こんな事態の打開をめざして、民主党は6月15日国会議員懇談会を発足させました。共産党は対策委員会をつくっています。
7月12日には東京地裁で結審。8月には広島地裁での判決が予想されています。