被爆者相談所および法人事務所
〒113-0034 文京区湯島2-4-4平和と労働センター6階
電話 03-5842-5655 ファックス 03-5842-5653
相談電話受付時間
平日 午前10時から午後5時、土曜 午前10時から午後3時

原爆症認定集団訴訟 広島訴訟 広島地裁判決骨子

 見出しの強調等は東友会によるものです。また、原本に丸付き数字などの環境依存文字があった場合は、文字化けを避けるために表記を変更しています。

第1 主文の骨子

1 被告厚生労働大臣が、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(被爆者援護法)に基づき、原告ら(41名)の原爆症認定申請に対し行った各却下処分は、いずれもこれを取り消す。

2 原告らの、被告国に対する損害賠償請求は、いずれもこれを棄却する。

第2 事案の概要

 本件は、広島市に投下された原子爆弾に被爆した原告らが、被告厚生労働大臣に対し、被爆者援護法に基づいて行った原爆症認定申請が却下されたことから、それら却下処分の取消しを求めるとともに、被告国に対し、上記各却下処分は故意又は過失に基づく違法な行為であり、原告らは損害を被ったと主張して、国家賠償法に基づき、慰謝料等(各原告当たり300万円)の損害賠償を求めた事案である。

第3 判断の骨子

1 争点1(1)(起因性判断の適法性)について

 原告ら各人の申請疾病と放射線との問に因果関係が存在するかという起因性の判断に当たっては、各原告ごとの被爆状況、被爆後の行動、急性症状などやその後の生活状況、具体的症状や発生に至る経緯、健康診断の結果等の全証拠を、経験則に照らして全体的、総合的に考慮したうえで、原爆放射線被曝の事実が当該疾病等の発生又は進行を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性が認められるか否かを、法的観点から、検討することが必要であると考えられる。
 起因性判断の適法性が争点となった原告ら(40名)について、各申請疾病及び各原告の個別事情をもとに、各原告の各申請疾病の放射線起因性を検討すると、いずれの原告も、その申請疾病につき原子爆弾の放射線起因性が認められる。

2 争点1(2)(要医療性判断の適法性)について

 その余の原告(1名)については、放射線起因性があることについでは争いがなく、要医療性が争点であるところ、同原告は、本件認定申請時から現在に至るまで引き続いて「現に医療を要する状態にある」と認められる。

3 争点2(不法行為の成否)について

被告厚生労働大臣が、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく、漫然と本件却下処分を違法・有責に行ったとまではいうことができない。また、原告らが被告厚生労働大臣に対する本件却下処分の取消しを求める請求においては勝訴していることなどをも考慮すると、被告らの対応が遅延したことを理由とする原告らの不法行為による慰謝料請求の主張は採用できない。

以上