原爆症認定問題の「政治決着」大揺れ
草の根の世論と運動こそ国・厚労省に迫る力
原爆症認定問題について、河村建夫官房長官は、2009年5月28日の東京高裁判決をタイムリミットにして「訴訟の全面解決と司法判断にそった原爆症認定基準の改定をはかる」と発言してきました。しかし麻生内閣の迷走を反映するかのように、訴訟解決も認定基準の改定も被爆者の願いを生かす方向には残念ながらすすんでいません。
6月9日に原告・被爆者と面談した舛添要一厚生労働大臣は「総理にご決断いただくための作業をすぐにはじめたい」と発言。しかし22日の医療分科会は、東京高裁が原爆症と認めた甲状腺機能低下症と慢性肝炎・肝硬変について「放射線起因性が認められる」という条件をつけて「積極認定」の指定病名に追加、東友会や日本被団協、原告団は「放射線起因性」をつけたことについて、激しく抗議しました。
その後26日の閣議後記者会見で「できる限り早く政府の方針を出す。麻生内閣で決着する。原告団との詰めに入る」と官房長官が発言しました。
しかし厚労省は、医療分科会で決定した「2疾病追加」についての説明を求めた日本被団協の申し入れを拒否。7月13日の医療分科会で原告14人を認定したと公表したものの審議されたのは諮問件数103件のわずか13%に留まりました。
14日には舛添厚労大臣が15日以降に官房長官と詰めの作業に入ることが報道され、16日に日本被団協と全国原告団などが開いた院内集会では、参加した与党プロジェクトチームの南野知惠子座長をはじめ、自民、民主、公明、共産の各党代表すべてが、8月6日までに全面解決をするよう政府に要請すると明言しました。しかし、被爆者側が訴訟解決の最低条件をとしてきた「勝訴原告の無条件認定」はもとより、審査基準の改定にむけた動きがまったく見えない状態が続いています。
このため日本被団協と原告団などは、政府に、あらためて訴訟の一括解決を求める提案をおこない回答を求めることにしています。