被爆者相談所および法人事務所
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1キロ直爆でも国は原爆症と認めず 被爆者の願いに逆行

 「1キロで直接被爆していても、前立腺がんを原爆症と認めないのか!?」2006年10月11日、原爆症集団訴訟の東京弁護団会議で驚きの声があがりました。10月6日に杉並区の諏山忠徳さんの異議申立が棄却されたことが報告されたときのことです。高齢者に多く発症するため調査資料が乏しい前立腺がんは、原爆放射線との因果関係が証明できないといわれています。しかし、これまで国・厚生労働省は、広島1.2キロ、長崎1.4キロの距離で被爆した人の前立腺がんを原爆症と認定していた事例があります。ところが今回、さらに近距離の同じ病気を「原爆とは関係ない」と却下したのです。
 諏山さんが、認定申請を出したのは2003年11月。諏山さんが被爆した広島の陸軍幼年学校は、生存することすら困難だった場所でした。しかし翌2004年11月、申請は却下されました。諏山さんが被爆者手帳を申請したとき、陸軍幼年学校があった場所を間違って記入したため、手帳に記入された被爆距離が2キロになっているからだと判断した担当弁護士と東友会相談員は、12月に異議申立とともに被爆地の変更申請を提出。これには、諏山さんが参加する杉並区の被爆者の会・光友会の2人の役員が資料を用意し、証明書を書いたりして強力に支援しました。申請を受けた東京都は1カ月後の2005年1月に被爆地を「基町」に、被爆距離を1キロに訂正しました。
 寝たきりになっても、「かならず認定されるから」と待っていた諏山さんでしたが、認定申請の2年後、異議申立から10カ月後の2005年11月に逝去。その後1年近くたった2006年10月に棄却通知が届きました。諏山さんの介護をつづけていた実娘の新藤小雪さんは、「私は被爆していませんが、夫は被爆者で、夫の家族も私の家族も原爆のため人生が変わるほど苦しみました。父の却下は納得できません」と提訴を希望しています。

棄却を通知する「決定書」の写真
国から届いた棄却通知