原爆症認定集団訴訟 福岡高裁判決及び横浜地裁判決についての声明
2009年11月30日
- 原爆症認定集団訴訟全国原告団
- 原爆症認定集団訴訟全国弁護団連絡会
- 原爆症認定集団訴訟を支援する全国ネットワーク
- 日本原水爆被害者団体協議会
- はじめに
本日午後、福岡高等裁判所第四民事部(牧弘二裁判長)は、原爆症認定熊本第一次訴訟に関し、未認定原告2名のうち1名につき厚生労働大臣の却下処分を取り消す逆転勝訴の判決を言い渡した。
また、横浜地方裁判所第1民事部(北澤章功裁判長)は、原爆症認定集団訴訟(神奈川)につき、未認定原告5名のうち4名について厚生労働大臣の却下処分を取り消す原告勝訴の判決を言い渡した。
本日の両判決は、本年8月6日、国が原爆症認定集団訴訟の一括解決を決断し、日本被団協との間で「原爆症認定集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認書」の調印を行ってから、初めての司法判断である。 - 判決の評価
上記の福岡高裁判決において、一審判決を前進させる逆転勝訴の判断がなされたこと、横浜地裁において、遠距離・入市被爆の原告や外傷を申請疾病とする原告を含む5名中4名を原爆症と認める判決がなされたことは、今後の訴訟解決、さらには認定行政の改定にむけて、大きな意義を有するものである。
しかし、本日2名の敗訴者が出たこと、特に他の裁判所において原爆症と認められ確定している熱傷瘢痕や糖尿病、腰椎すべり症、骨粗鬆症などについて放射線線起因性が認められなかったことは極めて遺憾であり、被爆者として容認しがたい。私たちは、今後裁判所においてかかる判断が繰り返されないように全力を尽くす所存である。
また、両判決が国家賠償について被爆者側の請求を斥けたことも遺憾である。 - 本年8月6日、麻生太郎首相(当時)と日本被団協との間で「原爆症認定集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認書」が取り交わされ、その中で厚生労働大臣と原告団、弁護団とが定期協議を行い、原爆症認定制度の抜本改定に向けた議論を開始することが確認されている。しかしこの定期協議は未だ1度も開催されていない。そしてこの間、原爆症の認定申請をした後、その処分が未了のまま滞留させられている被爆者は8000名を超えている。
厚生労働大臣は本日の判決を受け、直ちに定期協議を開催し、速やかに原爆症認定行政の抜本的転換を行なわなければならない。 - 現在、世界では、核兵器の恐ろしさ、残虐さへの認識から、核兵器廃絶に向かう大きな流れが生じつつある。
今こそ、唯一の被爆国である我が国政府は、核兵器の惨禍を繰り返してはならないという思いから立ち上がった被爆者の声に耳を傾け、苦しみに目を向け、そして被爆者の訴えを世界に発信し、核兵器廃絶に向けた主導的な役割を果たすべきである。原爆症認定問題の解決はその第一歩である。
以上