被爆者相談所および法人事務所
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厚労省「原爆症認定の在り方に関する検討会」 被爆者の願い無視

 安倍前首相の「見直し発言」をうけて開催されている厚生労働省の「原爆症認定の在り方に関する検討会」は、第3回が2007年10月29日に九段会館で、第4回が11月12日に厚生労働省内で開かれました。
 第2回検討会の終わりに、座長が「次回は論点整理をおこなう」と述べたことから、日本被団協は「政令で定める疾病」について議論してほしいなど、7項目の要求をしました。
 ところが第3回の冒頭に座長が示した「論点メモ」は、「被曝線量について」「放射線起因性・原因確率について」などという、果てしなき科学論争をめぐるテーマだけで、被団協の意見は全く無視されました。

線量影響吟味せず結論出し急ぐ

 それでも第3回検討会では、靜間清委員(広島大学大学院教授)が、原爆の被曝線量で取り上げられてこなかった「ベータ線の影響はガンマ線の数十倍」、放射性降下物は「はるかに広範囲の地域に降下した」など、実例や調査結果を上げて説明しました。
 ところが、甲斐倫明委員(大分県立看護科学大学教授)は、病気にかかった年齢(到達年齢)を考慮した原因確率の研究が放射線影響研究所で進んでいると発言。これを受けて金澤一郎座長は即座に、現在の審査の方針に使われている「原因確率」の手直しの作業を甲斐委員に依頼しましたが、靜間委員が発言したベータ線の影響についてはいっさい触れませんでした。

線量過小評価で厚労省の代弁も

 第4回検討会では、神谷研二委員(広島大学教授)が、急性症状が起きる被曝線量(しきい値)が決まっている、原発事故のデータなどから脱毛は2グレイ以上、下痢は6グレイ以上の被曝でないと発症しないと説明。これは裁判のなかで、被爆者の急性症状はほとんどが原爆放射線以外が原因だと主張している政府側代理人の発言と共通するものです。
 さらに永山雄二委員(長崎大学大学院教授)も、長崎の西山地区の残留放射線については40年間分を合計しても自然界で受ける1年分の放射線にも満たないと発言しました。
 この日は鎌田七男委員(広島被爆者援護事業団理事長)だけが、検討会の基本的な考え方として、「被爆者援護法」の精神を生かして、被害の実態に即した検討が必要だと発言。入市被爆者に現れた急性症状やガン発症のデータを示して、現行施策の矛盾点を鮮明にしました。

官僚主導ではなく被害の実態に即した議論を

 検討会は「公開」とされていますが、検討の進行については密室協議。現在の「審査の方針」を引き継いでいくという厚生労働省の官僚が引いた路線を進もうとしていることが見え見えの検討会になっています。