原爆症認定集団訴訟 6回目の勝利! 熊本地裁判決
国の審査方針は不適切と明言
政府の原爆症認定行政を糾弾する判決が、2007年7月30日に熊本地方裁判所で言いわたされ、21人の原告のうち19人が勝訴しました。これは、2006年5月から続く原爆症認定集団訴訟判決の6番目。6回連続の被爆者側の勝訴によって、厚生労働省が却下した被爆者107人のうち94人が裁判所によって原爆症と認められました。
熊本地裁(石井浩裁判長)は判決で、厚生労働省が使っている「審査の方針」では、1.3キロ以遠の被爆者は、初期放射線被爆が過小評価され、誘導放射能による外部被曝と残留放射線による内部被曝も適正に算出されていない、と明言。東京地裁判決が切り捨てた急性症状のなかった被爆者3人の膀胱ガン(広島2キロ直爆・長崎4キロ直爆)、前立腺ガン・甲状腺機能低下症(長崎4.5キロ直爆)も原爆症と認定しました。
さらに、認定された病名には、糖尿病、肺気腫、慢性気管支炎、胃潰瘍、胃粘膜下腫瘍、変形性脊椎症・膝関節症、腰椎すべり症がはじめて追加され、「審査の方針」を廃止し、新しい制度をつくる必要があるとしました。
しかし、C型肝炎(広島2.5キロ直爆)とケロイド(広島2.3キロ直爆)で申請した2人が、被爆後の状況や、ケロイドの発生についての見解で却下され、控訴審での課題となりました。
炎暑のなか、「控訴するな」と連日行動
10日間で500人以上 厚労省前で要請
熊本地裁判決を「控訴するな」「原爆症認定制度の抜本改善を」と要求する行動は、判決日の7月30日から厚生労働省が控訴した8月10日まで、東京、広島、長崎、熊本を中心に全国でつづけられました。
東友会と「東京おりづるネット」が支えた厚労省前昼休み街頭行動には、10日間でのべ500人近い被爆者・支援者が参加。炎天の下で「一刻も早い解決を」と訴えました。この行動には、首都圏の被爆者団体とともに、連日、熊本から原告団と弁護団の代表が参加。自民党、公明党、共産党の国会議員もマイクで訴えました。30日の報告集会、8日の官邸や厚労省への要請もおこなわれました。
被爆地では、広島・長崎両市で式典の前日に市民集会が開かれ、現地の被爆者や支援者とともに出かけていた東友会関係者が参加。自民、民主、公明、共産、国民新、社民の各党代表がそれぞれ参加し、厚労省の姿勢を批判し、被爆の実態にみあった認定制度の改善への尽力を約束しました。
またも厚生労働省が控訴!
厚労省は8月10日、熊本地裁判決を不服として福岡高裁に控訴しました。5日に被爆者代表と会った安倍晋三首相は、現在の原爆症認定のあり方を見直す方針を示しましたが、「裁判とは別」とも述べていました。原告・弁護団は、厚労省の不当な控訴に対し、即日、抗議声明を出しました。