被爆者相談所および法人事務所
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介護保険制度と原爆被爆者

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介護保険制度とは

 介護保険制度は、高齢化社会に対応することを目的に1997年に法律(介護保険法)が作られ、準備期間を経て2000年4月から実施されている制度です。40歳以上の日本国民全員に加入することが義務付けられ、保険料を支払います。制度の実施・運営主体(保険者)は区市町村です。介護保険に加入している(被保険者)は、介護が必要になったとき、区市町村に申請して介護認定を受け、必要な介護サービスを利用します。
 介護保険制度には、被爆者を特別に支援する項目はなく、国民全体が等しく扱われています。しかし、介護サービスのなかには、被爆者手帳を見せれば利用料が無料(自己負担なし)になるものがあります。

介護保険料

 被爆者も一般の国民と同じように、所得に応じて介護保険料を支払います。介護保険料の額は、区市町村ごとに所得によって決められます。介護保険の保険料に関して、「被爆者の制度」による助成はありませんが、低所得者向けの一般的な減免制度はあります。

介護保険制度の利用

 介護保険制度を利用するためのおおまかな流れは以下の通りです。

  1. 区市町村に申請
  2. 要介護度の審査と認定
  3. ケアプラン等の作成
  4. 介護サービス利用開始

介護サービスの申請

 介護が必要になり、介護保険制度を利用するときは、介護される人が住んでいる区市町村の窓口に申請をすることが必要です。
 65歳以上の人は、介護が必要になった原因や病名に制限はありません。
 申請は、本人の家族のほかに、成年後見人、区市町村が紹介する民生委員、地域包括支援センターなどの介護保険事業所が代行することができます。

要介護度の認定

 区市町村に介護保険の利用申請をすると、(1)調査員が申請した人を訪問して生活状態の調査をし、(2)主治医に区市町村から「意見書」が直接送られ病気や身体状態が調査されます。この2つの調査をふまえ、申請した人の「要介護度」が決められます。結果が届くまで1カ月程度かかります。
 「要介護度」のランクの目安は、次の表のようになります。「要介護度」によって、利用できる介護サービスの種類や、手続き方法などが変わってきます。「要支援」に認定された人は、「介護予防サービス」が利用できます。「要介護」に認定された人は、「介護サービス」が利用できます。

「要介護度」の区分とおもな状態
要介護度 おもな心身の状態(目安) 使えるサービス
自立 以下のどれにもあてはまらない 介護保険のサービスは使えません
要支援 1 日常生活の中での立つ、座る、歩くなどの基本動作は、ほぼ自分でおこなうことができる。しかし、この状態が悪化すれば要介護の状態になることが考えられるため、そうならないために、日常生活の動作に何らかの支援をしたほうがいい状態 「介護予防サービス」を利用できます
2 「要支援1」の状態から日常生活をおこなう能力がわずかに低下し、何らかの支援が必要となったが、介護予防サービスを利用すれば、機能の維持、改善が見込める状態
要介護 1 「要支援2」の状態から日常生活をおこなう能力が一部低下。簡単な日常動作はおおむね自立しているが、立ち上がりや歩行が不安定になり、排泄や入浴などに一部介助が必要な状態 「介護サービス」を利用できます。
2 「要介護1」の状態に加え、日常生活の動作についても部分的な介護が必要。立ち上がりや歩行が自力では困難になり、排泄や入浴の一部またはすべてで介助(手助け)が必要な状態
3 「要介護2」の状態からできない基本動作が増え、立つ、歩くも自力ではできない。電話をかける、レンジを使うなど基本動作以上の機能動作は完全にできず、排泄・入浴・衣服の着脱などに全面的な介助が必要。ほぼ全面的な介護が必要な状態
4 さらに日常生活の全般で能力の低下が見られ、排泄・入浴・衣服の着脱に全面的な介助、食事するときの一部に介助が必要。介護なしには日常生活を営むことが困難な状態
5 生活全般にわたり全面的な介助が必要。認知症などで他者との意志疎通ができず、介護なしには日常生活が不可能な状態
【補足】
  • 「自立」は、介護の必要性を認められなかった人で、介護保険のサービスは利用できません。
  • 「要支援1から2」は、「介護予防サービス」の利用で心身の状態が改善する可能性が高いと判断された人です。
  • 「要介護1から5」は、それぞれの状態に応じた「介護サービス」が必要と判断された人です。
  • 上記はあくまで目安です。実際の要介護度の認定結果は、区市町村の認定機関の判断によります。

ケアプランの作成と介護サービスの利用

 「要介護度」が決まると区市町村から連絡があり、それに応じたケアプランを作ってもらうことになります。
 「要支援1から2」の人は、「地域包括支援センター」に連絡し、介護予防のケアプランを作ってもらい、施設や事業所と契約して「介護予防サービス」を受けます。
 「要介護1から5」の人は、ケアマネジャーにケアプランを作ってもらい、施設や事業所と契約して「介護サービス」を受けます。

 ケアプランを作ってもらうときには、次の事柄を明らかに伝えてください。

介護を受ける人の視点
日常生活を送っていく上で、何ができ、何ができなくて困っているのか。
介護をする家族(同居・別居)の視点
日常的に、どのような介護ならでき、何ができないのか。

介護サービスの自己負担分と「被爆者の制度」による助成

 介護サービスには、大きく分けて「医療系サービス」「福祉系サービス」「地域密着型サービス」があります。介護サービスを利用すると、その利用料のうちの自己負担分(介護サービス利用料)を支払う必要があります。自己負担分の割合は本人の所得によって1割から3割と変わります(負担割合の通知は区市町村から届きます)。ただし、介護を受ける人が被爆者であれば、介護サービス利用料に「被爆者の制度」から助成されるものがあります。

介護サービスの自己負担分の割合
年間所得額(年金収入等含む) 負担割合
340万円以上 3割
280万円以上かつ340万円未満 2割
280万円未満 1割

医療系サービス

 医療系サービスは、被爆者が一般の医療機関を利用したときと同様に、「被爆者の制度」から「被爆者一般疾病医療費」として助成されるため、被爆者本人のサービス利用料は原則的に無料となります。
 ただし、食事代や滞在費食事代や滞在費(室料、水光熱費ほか)など介護保険に含まれないものは、被爆者も有料です。

【注】サービスを提供してくれる事業所や施設が「被爆者一般疾病医療機関」の届け出をしていない場合は、被爆者手帳を見せてもその場では無料になりません。いったん費用を支払ったあと、払い戻しの請求を東京都に出すことになります。このような場合、支払ったときの領収書を必ず保管しておいてください。

医療系サービス 「被爆者の制度」で助成があるもの

サービス名 要介護度による違い
要支援1から2
(介護予防サービス)
要介護1から5
(介護サービス)
訪問看護 被爆者の制度で無料 介護保険制度によるサービスの自己負担分は、「被爆者の制度」で助成されるため、被爆者手帳で無料になるか、払い戻しの対象になります。 被爆者の制度で無料介護保険制度によるサービスの自己負担分は、「被爆者の制度」で助成されるため、被爆者手帳で無料になるか、払い戻しの対象になります。
訪問リハビリテーション
通所リハビリテーション(デイケア)
居宅療養管理指導
短期入所療養介護(ショートステイ)
介護老人保健施設(老健)入所 利用できません 「要支援」ではこのサービス自体を使えません
介護療養型医療施設入所
介護医療院入所
【注意】
  • ここに記載のない医療系サービスは、「被爆者の制度」による助成がないため、被爆者も介護サービス利用料を支払う必要があります。
  • 上記すべてのサービスに当てはまる注意事項として、滞在費や食費など介護保険外の費用は「被爆者の制度」の助成対象ではないため、支払う必要があります。

福祉系サービス

 福祉系サービスは、医療系サービスと違い、「被爆者の制度」で助成があるサービス(被爆者手帳で無料になる)と、助成がないサービス(被爆者も利用料の支払いが必要)が、はっきり分かれています。
 従来福祉系サービスと分類されてきた介護サービスが近年、地域密着型サービスとされるものが増えてきました。例えば、「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」などが地域密着型サービスとして分類されるようになっています。次項、地域密着型サービスの説明と一覧表もご覧ください。

【注】無料になるサービスでも、他県にある事業所や施設を利用した場合は、いったん費用を支払ってから、領収書等を付けて東京都に払い戻し請求の申請をします。

福祉系サービス 「被爆者の制度」で助成があるもの

サービス名 要介護度による違い
要支援1から2
(介護予防サービス)
要介護1から5
(介護サービス)
通所介護(デイサービス) 被爆者も有料 被爆者の制度で無料
短期入所生活介護(ショートステイ) 利用できません「要支援」ではこのサービス自体を使えません 被爆者の制度で無料
介護老人福祉施設(特養)入所 利用できません「要支援」ではこのサービス自体を使えません 要介護3から5:被爆者の制度で無料要介護1から2では、このサービス自体を使えません
訪問介護(ホームヘルプ) 被爆者も有料 原則は被爆者も有料ですが、低所得者援助施策があります。
【注意】
  • ここに記載のない福祉系サービスは、「被爆者の制度」による助成がないため、被爆者も介護サービス利用料を支払う必要があります。
  • 上記すべてのサービスに当てはまる注意事項として、滞在費や食費など介護保険外の費用は「被爆者の制度」の助成対象ではないため、支払う必要があります。

地域密着型サービス

 住み慣れた地域の近くで介護サービスが受けられるようにとつくられたものです。
 地域密着型サービスの特徴は、区市町村ごとにサービスに違いがあることです。例えば、A市では提供されていても、隣のB市では提供されていないサービスがあります。そして、A市で提供されている地域密着型サービスを、隣のB市に住む人が利用することは、原則としてできません。
 以前は助成対象でなかった「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」の介護サービス利用料が、2021年度から「被爆者の制度」で助成されるようになりました。

地域密着型サービス 「被爆者の制度」で助成があるもの

サービス名 要介護度による違い
要支援1から2
(介護予防サービス)
要介護1から5
(介護サービス)
小規模多機能型居宅介護 被爆者の制度で無料 被爆者の制度で無料
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 利用できません「要支援」ではこのサービス自体を使えません
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 要支援2:被爆者の制度で無料「要支援1」ではこのサービス自体を使えません
【注意】
  • ここに記載のない地域密着型サービスは、「被爆者の制度」による助成がないため、被爆者も介護サービス利用料を支払う必要があります。
  • 上記すべてのサービスに当てはまる注意事項として、滞在費や食費など介護保険外の費用は「被爆者の制度」の助成対象ではないため、支払う必要があります。

介護施設への入所

 介護施設への入所も介護サービスのひとつで、「医療系サービス」「福祉系サービス」「地域密着型サービス」に分類されます。しかしながら、住居を施設に移すという点で、自宅で受ける介護サービスや自宅に住みつつ施設に通う介護サービスとは異なる側面があります。近年多くの種類の介護施設ができており、個々の介護施設によって「被爆者の制度」が使えるか使えないかが様ざまに変わってきています。「被爆者の制度」が使えるか否かに焦点をあて、代表的な介護施設をまとめました。

おもな介護施設の特徴と「被爆者の制度」の利用(2022年4月現在)
注 被爆者手帳が使える施設でも、食事代や日用品代など介護保険外の費用は自己負担になります。
施設の種類 概要 「被爆者の制度」の利用
被爆者手帳を使えるか 介護手当を受給できるか
特別養護老人ホーム(特養) 原則は要介護度3以上が対象。食事、入浴など日常生活の介助を受けながら生活する施設。費用は月額10万円から15万円ほど。地域によっては入所待ちの人が多く、数カ月から数年待つ場合もあるのが現状。 有効(介護保険のサービスを利用した自己負担分は助成される) 不可(自宅で受ける介護でないため介護手当は受けられない)
介護老人保健施設(老健) 要介護1以上が対象。病院から退院したあとすぐに自宅で生活することが難しい人が在宅復帰を目指すために入る施設。入所期間は原則として3から6カ月。費用は月額9万円から12万円ほど。
介護療養型医療施設および介護医療院 要介護1以上が対象。医師・看護師が常駐し、疾患からの回復期にある寝たきりの人に医療ケアなどを提供する施設。回復した場合は退去。「介護療養型医療施設」の役割は「介護医療院」や「老健」に順次転換中。
グループホーム(認知症対応型共同生活介護施設) 65歳以上、要支援2以上で認知症を持つ人が、専門的なケアを受けながら共同生活する施設。原則として、施設のある自治体に住民票を持つ人しか入所できません。
介護付き有料老人ホーム 基本的に介護スタッフが24時間常駐。介護度別の費用を払うことで日常生活に関わる介護サービス全般を受けながら生活。主に民間企業が運営し、要介護度5までを受け入れ、看取りまで対応する施設もあります。 無効(施設が提供するサービスに被爆者手帳は使えない) 基本的に不可(自宅扱いにならないので介護手当は受けられない。ただし、自立型の施設で自宅扱いにできれば、「介護手当」を受給できる場合がある。)
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) 自立あるいは介護度の軽い人が、見守りと生活相談サービスを受けながら暮らすことができる民間の賃貸住宅。介護度が重い人や認知症が進んだ人は受け入れられない場合もあります。 基本的には可(自宅扱いになるので介護手当を受けられる。ただし、特定施設入居者生活介護の指定がある施設では自宅扱いにならないため不可の場合がある。)
住宅型有料老人ホーム 比較的介護度が軽い人向きで、自宅のような位置づけで暮らすことができる民間の有料老人ホーム。家族などが訪問して介護することも可能です。 (自宅扱いになるので介護手当を受けられる)

 表で被爆者手帳が使える(有効)というのは、介護保険制度に基づく介護サービスの自己負担分が、「被爆者の制度」で助成されるという意味です。介護保険に含まれないサービスは、「被爆者の制度」では助成されないため、利用料の支払いが必要です。
 「被爆者の制度」独自の「介護手当」は、あくまで自宅での介護が前提なので、施設に入所した場合は原則的に使えなくなります。

 主に民間企業が運営する施設では、「被爆者の制度」が利用できるかは施設によって異なります。
 例えば「介護付き有料老人ホーム」は、費用さえ出せば手厚いサービスも受けられますが、運営者による私的な介護サービスの提供になるため、基本的に「被爆者の制度」(被爆者手帳)は使えません。ただし、介護保険が使える有料老人ホームのうち混合型の自立棟に入所している場合は、自宅に住んでいるのと同じ扱いにできるため、「一般(他人)介護手当」の対象となる場合があります。
 「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」や「住宅型有料老人ホーム」も被爆者手帳は使えませんが、そこが自宅として扱われる場合は、外部からの訪問介護を受けた分は「一般(他人)介護手当」の対象となります。ただし、サ高住には特定施設入居者生活介護の指定を受けている施設もあり、「介護手当」の対象にならない場合があります。

 どの施設でも入所前の下調べが大切です。費用の細目はもちろん、立地や設備、サービス内容、スタッフの対応などを確認しましょう。被爆者手帳を見せ、どの範囲まで「被爆者の制度」を利用できるかといったことも、事前に施設と確認し合ってください。

「被爆者の制度」独自の「介護手当」

 介護保険制度とは別に、「被爆者の制度」で独自に定められた「介護手当」があります。介護が必要になった被爆者が自宅で介護を受けているとき、東京都に申請して認定されると、「一般(他人)介護手当」か「家族介護手当」のどちらかを受けることができます。ただし、病院に入院している場合は「介護手当」を受けられません。
 介護施設への入所にあたっては、その施設の性格によって「介護手当」が受けられるかどうかが変わってきます。

 「介護手当」についての詳しい説明は、「在宅被爆者の制度:介護手当」のページをご覧ください。

 ご質問等ありましたら、東友会相談所までお気軽にご相談ください。