被爆二世に対する東京都の施策
国の定める施策では、被爆二世は年1回、一般の健康診断を無料で受けることができます。これはどの都道府県に住んでいても共通です。東京都は、都被爆者援護条例に被爆二世(被爆者の子)を位置づけているので、次のような追加施策を実施しています。
「健康診断受診票 子」の交付
「両親のいずれかが「被爆者手帳」の交付を受けている場合、都内に住むその実子は、申請すれば、被爆二世(被爆者の子)としての施策が受けられます。
実父母がすでに死去している場合でも、生前に「被爆者手帳」を交付されていれば申請できますが、交付を受けていなかった場合は対象外とされています。
- 広島で被爆し被爆者手帳の交付を受けた人の実子で、1946(昭和21)年6月1日以後に生まれた人
- 長崎で被爆し被爆者手帳の交付を受けた人の実子で、1946(昭和21)年6月4日以降に生まれた人
申請が受け付けられると、東京都の「健康診断受診票 子」が発行されます。この「健康診断受診票 子」が、被爆二世である「資格」を示すものです。これにより、東京都の被爆二世の施策を受けることができます。
都内に住む被爆二世は、被爆者と同じ内容の健康診断を年2回無料で受けられます。東京都は、国基準の検査項目に、胸部X線・心電図・血清コレステロール検査を追加しています。
- 基本検査(問診、血液検査、CRP検査、尿定性検査、血圧測定)
- 胸部X線撮影検査(東京都独自の追加項目)
- 心電図検査(東京都独自の追加項目)
医師が必要と認めたとき追加で受けられる検査
- 肝機能検査
- ヘモグロビンA1c
- 血清総コレステロール定量検査(東京都独自の追加項目)
さらに東京都は、被爆二世に被爆者と同じ内容のがん検診を実施しています。
- 胃がん検診
問診、および胃部X線検査または胃内視鏡検査 - 肺がん検診
問診、および胸部直接X線検査。医師が認めたときは喀痰細胞診 - 多発性骨髄腫検診
問診、および血清蛋白分画検査 - 大腸がん検診
問診、および便潜血検査 - 乳がん検診
女性のみ。問診、および視診、および触診、乳房X線検査=マンモグラフィ - 子宮がん検診
女性のみ。問診、視診、内診および頸部細胞診検査。医師が認めたときは、体部細胞診検査およびコルポスコープ検査
被爆二世の健康診断とがん検診が受けられるのは、毎年、春期(5月から6月)、秋期(11月から12月)とされています。この期間以外でも、指定病院が受け人れてくれれば、健康診断やがん検診を受けられます。がん検診を希望する場合は、年2回ある健診のうちの一方をがん検診(男性4種・女性6種の全部を受けて1回分)に振り替えられます。たとえば、春期を一般健診、秋期をがん検診という具合にです。
被爆二世は、健康診断の結果で医師が必要と認めた場合、精密検査も受けられますが、限度額(7,028円/2025年4月現在)を超えた額が自己負担になります。この限度額は、検査費用の全額(10割)です。医療保険を使った自己負担分(1割から3割)ではありませんので、ほとんどの精密検査が限度額を超えます。注意してください。
【注意】ここで紹介している健康診断・がん検診は、東京都における事例です。
「医療券」の発行(医療費助成)
東京都が発行している被爆二世の「健康診断受診票 子」を持つ人が、被爆者の「健康管理手当」の対象になっている障害に該当する病気(下表参照)にかかり、治療に6カ月以上かかると見込まれるとき、「医療券」の申請ができます。「医療券」の発行にあたっては、被爆者の「健康管理手当」の「障害」が条例で定められているだけなので、対象になる「病名」の範囲は広がっています。
障害名 | 主な病名 |
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造血機能障害 | 鉄欠乏性貧血、再生不良性貧血、血小板減少症、白血球減少症など |
肝臓機能障害 | アルコール性・ウイルス性を除く慢性肝炎、肝硬変、脂肪肝など |
細胞増殖機能障害 | すべての部位の悪性新生物(がん、白血病など) (脳腫瘍だけは良性腫瘍でも認められる場合があります。) |
内分泌腺機能障害 | 糖尿病、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、甲状腺機能亢進症、脂質異常症など |
脳血管障害 | 脳出血、くも膜下出血、脳硬塞など |
循環器機能障害 | 高血圧症、高血圧性心疾患、狭心症、心筋梗塞、慢性虚血性心疾患、心房細動など |
腎臓機能障害 | 慢性腎炎、ネフローゼ、慢性腎不全、慢性糸球体腎炎など |
水晶体混濁による視機能障害 | 先天性・糖尿病性を除く白内障のみ |
呼吸器機能障害 | 肺気腫、間質性肺炎、肺線維症など |
運動器機能障害 | 骨粗鬆症、変形性脊椎症、変形性関節症など |
潰瘍による消化器機能障害 | 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎 |
申請後の審査で認められて「医療券」が発行されると、申請した病気の治療に限り、医療保険の使える範囲の医療費の自己負担分が助成されます。ただし、入院時の食事代は自己負担とされています。被爆二世の医療費の助成は、申請を東京都に提出した月の初日(1日)以降からになります。
被爆二世の「医療券」は、都内で医療保険が使える病院や医院、薬局なら、どこでも使えます。その場で「医療券」が使えない場合には払い戻しができます。
医療券に記載されている病気の治療に関わる「装具(コルセット、下肢装具、義手・義足など)」を医師の指示によって作成した場合には、保険が使える範囲の「装具」費用の払い戻しを受けることができます。ただし、「装具」は患者個々人に合わせて業者が作りますから、いったん「装具」の費用(実費全額)を支払ったあとで払い戻しの請求をします。この場合、まず「医療保険の自己負担分(療養費)を除いた保険負担分」の払い戻しを受け、そのあと「医療保険の自己負担分」の払い戻しを受けるという、2段階の手続きになります。払い戻しが可能かどうか、どう手続きすればいいかは、わかりにくいこともあるので、東友会にお問い合わせください。