原爆症認定問題 2008年1年間のうごきは……
「被爆の実態にみあった原爆症認定制度の抜本改善を」「厚生労働省は、原爆症認定集団訴訟の判決にしたがえ」という国民世論におされて、厚労省は2008年4月から「新しい審査の方針」をつかった原爆症認定審査を開始しました。
認定件数は2倍以上に
12月2日に開かれた厚労省と日本被団協・集団訴訟原告団・集団訴訟弁護団との第9回「協議」で同省の宮崎敦文健康対策推進官と眞鍋馨課長補佐は「4月から1615件を認定した」「審査の滞留は10月末現在で7553件」と発言しました。
東友会が対応した事例をみると、11月末現在で「新方針」の対象になった249件のうち107件が認定されました。「107件」という認定件数は、東友会扱い分だけで東京の医療特別手当受給者がこれまでの2倍になるという、大きな成果です。
しかし滞留数も多く認定疾病に偏りも
しかし、のこされた件数は142件と半分以上。うち厚労省事務局が認定できる「自動認定」や「新方針」で積極的に認定する被爆状況や疾病名の対象になる「積極認定」に指定されていながら、認定されていない件数は73件にのぼり、このなかには2008年3月以前に申請したものが21件も含まれています。
審査の大きな滞留を引き起こしているのは、厚労省医療分科会の第4審査部会が担当している心筋梗塞と白内障の認定審査の遅れです。現在厚労省は、4月から12月15日までの審査内容を発表していますが、審査部会ごとの認定数をみると、「積極認定」で認定されている1516件のうちの99%にあたる1502件がガンや白血病などの悪性新生物で、心筋梗塞と白内障はわずか14件だけです。
東友会扱いで2008年3月までに申請した事例だけみても、長崎の1.3キロ被爆の心筋梗塞、広島の1.3キロと1.7キロ被爆の白内障も、厚労省は認定していません。
東京高裁判決をにらみ「不作為」の申し立ても
このため東友会と東京原告団は東京弁護団の協力をえて11月27日に審査状況についての説明会を開催。申請者と原告、被爆者など76人が参加しました。説明会の席上、東友会の三宅信雄事務局長は、「このまま放置される状況がつづく場合は、来春に『不作為の不服申立』(厚労省の審査の遅れに対する異議申立)を集団で提出したい」とよびかけました。
すでに報道されているように、11月19日、被爆者や原告代表と面談した河村建夫内閣官房長官が、「勝訴原告の全員認定」と「原告全員の救済による訴訟の早期解決」について、「東京高裁の判決時がタイムリミット」と思っていると発言しています。東京高裁の結審は12月18日、判決は2009年5月に予定されています。
東京高裁での最終弁論の内容、東友会と「東京おりづるネット」などの行動は、次号で紹介します。