被爆者相談所および法人事務所
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どうみる?原爆症認定「新しい審査のイメージ(案)」

現状で過度な期待はもてず。運動の力で確かなものに

 厚生労働省が2008年1月17日に公表し、21日の「医療分科会」で報告された「新しい審査のイメージ(案)」は、まだ決定ではありませんが、これに基づくと、原爆症認定審査はおおよそ下図の流れで進行します。
 各種の悪性新生物(ガン)、白血病、副甲状腺機能亢進症で申請した場合は原因確率が計算されているので、10%を境に審査会にかけるかどうかを事務レベルで区分けします。原因確率が10%未満でも、これらの病気で申請した被爆者は、「直爆約3.5キロ以内」などの条件内なら「積極的認定」の対象になります。
 しかし、条件外の人とそれ以外の病気で申請した人は、指定病名にされた「放射線白内障」や「心筋梗塞」の場合でも、すべて、個別審査の対象になります。白内障や心筋梗塞には「放射線」起因が必要とされているのはこのためです。さらに慢性肝炎、甲状腺機能低下症など、これまで近距離被爆者の場合は原爆症と認定されていた病気が、審査会の「総合判断」のなかでどれだけ認定されるかは、まったくふれられていません。
 「積極的認定」の範囲に入った被爆者も、被爆者援護法第11条で「現に医療を要する状態にある被爆者に対し」と規定されており、認定疾病の「要医療性」が認められない場合は認定されないものと思われます。
 これに対し、日本被団協は事務局長談話を発表。この「イメージ(案)」は「原因確率」一辺倒の従来の審査基準に比べれば「評価できる」としたうえで、(1)被爆者のなかに線引きがなされたこと、(2)肝臓疾患が除外されていること、(3)訴訟の解決について言及されていないこと、(4)医療分科会の改革が示されていないことなどに課題が残されているとし、集団訴訟解決に今後も全力を挙げるとしました。

厚生労働省の「新しい審査のイメージ(案)」による基本的な審査の流れ(概略図)

「新しい審査のイメージ(案)」による審査の流れ(概略図)の読み上げブラウザ用テキストは、以下に掲載する「新しい審査のイメージ(案)」そのものを以て代えます。ご了承ください。

新しい審査のイメージ(案) 厚生労働省健康局

1. 今後の原爆症認定の審査に当たっては、
(1)被爆から長い年月が経過じ被爆者が高齢化していること
(2)放射線の影響が個人毎に異なること
などに鑑み、これまでの原因確率による審査を全面的に改め、迅速かつ積極的に認定を行うこととする。

2. このため、自然界の放射線量(1ミリシーベルト)を超える放射線を受けたと考えられ、被爆地点が約3.5キロメートル前後である者及び爆心地付近に約100時間以内に入市した者並びにその後1週間程度の滞在があつた範囲にある者が以下の症例を発症した場合については、格段の反対すべき事由がなければ、積極的に認定を行う。(編集部注:「ミリシーベルト」は原文ではmSvと表記)

3. 具体的には、
(1)がん、白血病及び副甲状腺機能元進症について
放射線起因性を推認させる様々な事情を考慮して積極的に認定を行うとともに、こうした記録がない場合にあっても、申請書の記載内容の整合性やこれまでの認定例を参考にしつつ判断する。
(2)放射線白内障について
老人性白内障を除き、積極的に認定する。
(3)心筋梗塞について
放射線起因性が認められる心筋梗塞を認定する。

4. また、これまでの認定の実態を踏まえて、幅広く審査会の審査を省略し、大臣が認定を行う。

5. 2.以外の場合についても、個別審査の上、総合的判断を加え、認定の判定を行う。