ノーモア・ヒバクシャ訴訟 大阪地裁判決 「新基準」以降4例目の勝訴
2015年1月30日、ノーモア・ヒバクシャ大阪訴訟(原告7人)の大阪地方裁判所の判決が言い渡され、4人が勝訴し、3人の訴えについては却下する判決が下されました。
勝訴原告は、いずれも甲状腺機能低下症の4人。狭心症、ケロイド、心筋梗塞の3人が却下されました。
判決によれば、勝訴した4人は、被爆地点が国の審査基準に少し外れているものの、被爆後の行動や病状から放射線に起因するに足る線量を浴びていると考えられるとし、厚労省が再々改定した「新しい審査の方針」(25年新方針)でも内部被曝の影響を含め被爆線量を過小評価している疑いがある、と指摘しています。これは「25年新方針」がなお、被爆の実態からかけ離れたものであることを示しています。
近畿訴訟の原告団と弁護団は、直ちに(1)「25年新方針」の誤りを認めて全原告を救済すること、(2)被爆者が裁判をする必要がないように」被爆者援護法と認定制度のあり方を抜本的に改めること、(3)唯一の原爆被爆国として核兵器の非人道性を世界に訴え国がこの運動の先頭に立つこと、を要求する声明を発表しました。
東京でも呼応した行動
これに呼応して東京でも、日本被団協、ノーモア・ヒバクシャ訴訟全国原告団と全国弁護団が連名の声明を発表。司法と認定行政の乖離を埋めるべく、控訴をあきらめて認定すること、認定制度を抜本的に改めること、被爆者の目の黒いうちに原爆被害に対する国の償いをすることなどを求めて厚生労働省に要請をおこないました。
これには、弁護団のほか、日本被団協の田中煕巳事務局長をはじめ東友会の大岩孝平代表理事、東京の原告や被爆者あわせて15人余が参加しました。
厚生労働省の担当室長は、「みなさんの要望は厚労大臣に伝える」との返答をしたのみでした。
厚労省は2月10日までに、勝訴した4人のうち3人について控訴。敗訴した3人の原告も控訴しました。
解説
今回の判決は、厚生労働省が3年続いた原爆症認定制度の在り方に関する検討会の結論を受けて、2013年12月16日に改定したとする「新しい審査の方針」(25年新方針)について裁判所が最初に判断したものです。特徴は甲状腺機能低下症に対する原爆放射線の影響が、がんや白血病と同程度であると裁判所が判断したことです。
「25年新方針」は、甲状腺機能低下症を2キロ以内直爆、、翌日までに1キロ以内入市とし、がんや白血病などの基準、3.5キロ直爆、、100時間入市から大幅に狭めました。今回勝訴した原告のうち国が控訴した、下表原告番号3、5、7の原告すべてが、がんなら認定されるという被爆状況です。しかし大阪地裁は、5の原告の白内障については放射線の影響を認めませんでした。
心臓疾患や狭心症については、その原因となる動脈硬化に放射線の影響があると判断されてきました。しかし、敗訴した6の原告は、動脈硬化ではなく副腎皮質球状帯の異常による高血圧が心筋梗塞の原因と判断されました。1の原告は、心臓疾患となった動脈硬化に対して放射線の影響は認められましたが、肥満や糖尿病などの影響が大きいと判断されました。
2のケロイドの原告は、申請したときに治療を必要としていない(「要医療性」がない)ことが敗訴の理由とされました。
原告番号 | 判決 | 控訴 | 性別 | 年齢 | 被爆地 | 被爆時年齢 | 被爆状況 | 申請病名 |
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1 | 敗訴 | 原告控訴 | 男 | 75 | 広島 | 5 | 2.4キロ直爆(大芝町)、被爆後まもなく爆心地付近通過。 | 狭心症 |
2 | 敗訴 | 原告控訴 | 男 | 83 | 広島 | 14 | 1.7キロ直爆、当日1.5キロ地点通過 | 火傷瘢痕(ケロイド) |
3 | 勝訴 | 国控訴 | 男 | 81 | 長崎 | 12 | 3.7キロ直爆、12日入市(0.5キロ) | 甲状腺機能低下症 |
4 | 勝訴 | 国容認 | 女 | 76 | 長崎 | 6 | 2.2キロ直爆、10日入市(1.2キロ) | 甲状腺機能低下症 |
5 | 勝訴 | 国控訴 | 女 | 74 | 長崎 | 5 | 4.0キロ直爆、11日入市(0.8キロ) | 甲状腺機能低下症、両白内障 |
6 | 敗訴 | 原告控訴 | 男 | 70 | 長崎 | 0 | 2.5キロ直爆、11日入市(0.3キロ) | 心筋梗塞、労作性狭心症 |
7 | 勝訴 | 国控訴 | 女 | 71 | 広島 | 2 | 3.45キロ直爆(仁保町)、7日入市(0.3キロ) | 甲状腺機能低下症 |