被爆者相談所および法人事務所
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ノーモア・ヒバクシャ熊本訴訟 審査方針にない疾病・被爆条件で勝訴

 2016年4月11日、ノーモア・ヒバクシャ熊本訴訟の5人の原告について、福岡高裁での判決言い渡しがあり、熊本地裁の判断どおり、3人が勝訴、2人が敗訴しました。
 今回勝訴した3人の疾病は、全員が厚生労働省が原爆症認定審査の審査方針で指定していないもの(下表で紹介)。このため、熊本地裁判決を不服として、国は高裁に控訴していました。
 この裁判で初めて認定された病名は「慢性腎不全」。しかも原告は、長崎3.8キロ直接被爆という、現在の審査方針では、がんでも認定されない距離での被爆でした。この判決は大阪高裁で続いた逆転敗訴を打ち破る大きな勝利となりました。
 この日、東友会の大岩孝平代表理事と日本被団協の田中煕巳事務局長、内藤雅義東京弁護団長など9人は、この判決を受けて、厚生労働省に日本被団協の「提言」(解説を別記)にそった原爆症認定制度に改めるよう要請しました。厚生労働省からは、新任の被爆者援護対策室の清水彰室長補佐など3人が対応しましたが、これまでどおり「聞き置く」という回答のみでした。
 その後、大岩代表らは厚生労働省の記者クラブで、判決の内容と日本被団協の「提言」について記者会見をおこないました。

厚労省内の一室、机を挟んで向かい合い厚労省代表と被爆者・弁護団が席に着いている。要請文を手渡す被爆者代表に頭を下げるように受け取る人物はじめ、厚労省代表は起立している。
福岡高裁判決のあと厚労省に要請する日本被団協と弁護団の代表
ノーモア・ヒバクシャ熊本訴訟原告 2016年4月11日 福岡高裁判決
原告 判決 申請病名
判決で認定された病名には(勝訴病名)を付記
性別 被爆時年齢 被爆地 おもな被爆状況
熊本地裁 福岡高裁 直爆距離 入市日と距離 備考
1 勝訴 勝訴
  • 右背部熱傷瘢痕
  • 高血圧性脳出血後遺症(勝訴病名)
7歳 長崎 2.5キロ ―― 西山地区で「黒い雨」浴びる
2 勝訴 勝訴
  • 慢性腎不全(勝訴病名)
13歳 長崎 3.8キロ ―― ――
3 勝訴 勝訴
  • バセドウ病(勝訴病名)
  • 甲状腺機能低下症(勝訴病名)
8カ月 長崎 2.0キロ ―― ――
4 敗訴 敗訴
  • 糖尿病
  • 高血圧症
  • 変形性脊椎症
16歳 長崎 3.2キロ 8月9日 1.8キロ ――
5 敗訴 敗訴
  • 右脛腓骨骨髄炎
2歳 長崎 2.4キロ ―― ――

原爆症認定制度に対する日本被団協の提言の主旨

 (1)現行の原爆症認定制度を廃止する。(2)全ての被爆者に「被爆者手当」を支給する。(3)障害の度合いに応じて三つの加算区分を設け、段階的な手当支給制度を作る。(4)加算対象疾病は、判決等でこれまで放射線の影響が認められた疾病、例えば全ての悪性腫瘍(がん)、白内障、心筋梗塞、甲状腺機能低下症、肝機能障害などとし、いずれの疾病も、距離や入市時間による制限は定めない。