ノーモア・ヒバクシャ訴訟 大阪、熊本の2地裁で判決
医療特別手当は医療給付だけの性格ではない 大阪地裁、熊本地裁
被爆の実態に合わない原爆症認定基準で却下された被爆者が、原爆症認定を求めて裁判を続けている「ノーモア・ヒバクシャ訴訟」は、2014年3月20日に大阪地裁で、3月28日に熊本地裁で、それぞれ判決がありました。
大阪地裁では原告7人全員が認定を勝ち取り、熊本地裁では8人の原告のうち5人が勝訴、3人が敗訴しました。
両判決とも、厚生労働省がかたくなに認定を拒んでいた非がん疾患と基準を超えた距離の被爆者を積極的に認定したのが特徴でした。
とくに大阪地裁判決で注目されたのは、『「医療特別手当は医療の給付」とともに「福祉」と「生活面の安定を期してされる金銭給付」である』と判示していることです。
これらの判決について厚生労働省は、基準を超えた距離と時間の被爆者を抜き出し、大阪で1人、熊本で3人について控訴しました。
地裁 | 判決後 | 原告番号 | 申請病名 | 性別 | 被爆時年齢 | 被爆地 | 直接被爆距離 | 入市被爆条件 | |
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入市日 | 入市距離 | ||||||||
大阪地裁 | 確定 | 16 | 狭心症、糖尿病、高血圧症、高脂血症 | 男 | 0 | 長崎 | 3.4キロ | 8月10日 | 1.5キロ |
確定 | 17 | 肝細胞がん | 男 | 14 | 長崎 | -- | 8月15日 | -- | |
国控訴 | 19 | 胃がん、前立腺がん | 男 | 6 | 長崎 | 4.0キロ | 8月10日 | 2.0キロ | |
確定 | 27 | 骨髄異形成症候群 | 女 | 16 | 長崎 | 1.1キロ | -- | -- | |
熊本地裁 | 確定 | 1 | 甲状腺機能低下症 | 女 | 18 | 長崎 | 2.4キロ | 8月 9日 | 0.5キロ |
国控訴 | 4 | 右背部熱傷瘢痕、高血圧性脳出血後遺症 | 女 | 7 | 長崎 | 2.5キロ | -- | -- | |
国控訴 | 6 | 慢性腎不全 | 女 | 13 | 長崎 | 3.8キロ | -- | -- | |
確定 | 7 | 再生不良性貧血、骨髄異形成症候群 | 女 | 15 | 長崎 | 2.4キロ | -- | -- | |
国控訴 | 8 | バセドウ病、甲状腺機能低下症 | 女 | 0 | 長崎 | 2.0キロ | -- | -- |
原爆症認定制度の抜本改正を 院内集会や議員要請
ノーモア・ヒバクシャ訴訟の勝利と原爆症認定制度の抜本改正をめざす「院内集会」が4月1日、衆院第2議員会館の会議室で開かれました。
主催はノーモア・ヒバクシャ訴訟の全国原告団と全国弁護団、共催は日本被団協と集団訴訟全国原告団と弁護団。
集会には、広島、長崎をはじめ全国から被爆者、原告、弁護士、支援者ら160人が参加しました。
冒頭はスライド上映。「原爆被害の実態、原爆放射線の人体影響の未解明性、ノーモア・ヒバクシャ訴訟に至った経過」を、3人の若手弁護士がスライドを使って説明しました。
主催者挨拶は、山本英典全国原告団長。大阪地裁、熊本地裁が原告勝利の判決をしたのに、厚生労働省が大阪で1人、熊本も控訴の構えでいることに「控訴は非人道。直ちに取り下げを」と訴えました。
共催団体から日本被団協の田中煕巳事務局長が、「司法と行政の乖離が埋められていないから訴訟が続く」と、厚労省の態度を批判。連帯の挨拶をしました。
要請文の読み上げに続いて、政党から激励と決意の挨拶。自民、民主、公明、維新、共産、社民の各党から12人の国会議員が参加し、決意を述べました。
集会後、自民党の寺田稔、平口洋の両議員に特別要請をしました。
大阪・熊本地裁判決に厚労省が控訴 原告団・弁護団がただちに抗議
厚生労働省が、大阪地裁の勝訴原告1人、熊本地裁判決で勝訴した5人のうち3人についても控訴したことについて、ノーモア・ヒバクシャ訴訟原告団、弁護団と日本被団協の代表12人は4月10日、厚生労働省に抗議と控訴の取り下げを要求する申し入れをしました。
厚生労働省側は、「基準の外だから控訴した」と言いました。代表団は、「被爆者が死に絶えるまで裁判をつづける気か」と追及しました。