被爆者相談所および法人事務所
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おりづるの子(東京被爆二世の会) 結成からの10年を振り返って

 「おりづるの子」(東京被爆二世の会)は、2023年4月に結成から10年を迎えました。2022年後半から徐々に対面での取り組みを再開、2023年6月25日には定期総会を開き、今後の活動について旺盛に意見を交わしました。

結成にいたるまでの思い

 この10年、どんな道のりを歩んだのでしょうか。
 記録上は、2013年4月21日が結成総会ですが、その1年前から、東友会の呼びかけで被爆二世の交流が始まりました。前年の12年4月、7月の交流会では、参加者同士の体験、気持ち、意見などを率直に交換することができ、父母の悲惨な体験を聞いてきた人や身体各所にがんが転移している人、甲状腺低下症によるうつ状態で苦しんできた人などが、「私だけじゃなかった」と涙して語りました。集会には、いつも東友会の村田未知子相談員が参加し、二世や親の施策について説明。医療費助成を受けられた人、親や被爆者のパートナーの医療特別手当や介護手当を申請した人もいました。
 「被爆体験の語り継ぎ」「地域の被爆者の聞き取り」「原発のことについて話し合いたい」「被爆二世の健康問題についてもっと知りたい」など、具体的にやってみたいことについて意見が出ました。
 そして、11月10日、3回目の交流会で、どんな二世の会をつくっていくのか、どんなことができるのか、会結成に向けて具体的な内容が話し合われました。結成の呼びかけは、2013年3月25日発行の「東友」(341号)に折り込んでいただきました。
 「被爆体験を背負い、周囲に理解してもらえない悩みや苦労を抱えて、私たちを生み育てた親を見てきた被爆二世・三世が、集い合い、誰もが平和で健康に暮らせる世の中を求めて活動したいと願ってのことです」

「東京被爆二世の会」と横書きされた看板が、会場前方の天井から下げられている。並べられた机に着席し、手元の資料に目を落とす参加者たち。一人が立って話をしている。
「おりづるの子」結成総会(2013年4月21日)

核兵器廃絶を中心に学習

 結成後の活動は、会員の意見を聞いて、運営委員会で話し合って決めてきました。核兵器廃絶と平和、自身の健康、親の介護などをテーマに、学習会やフィールドワークなどを年に2,3回のペースで続けました。
 核兵器廃絶の課題の中でも大きな取り組みだったのは、2015年のNPT再検討会議要請代表団に「おりづるの子」も参加したこと。田崎豊子さんと平山雪野さんを派遣するための準備として、NPTについて学習し、「被爆二世としての思い」を代表団に託すため英文の冊子(A5判28頁、16人が寄稿)も作成しました。ニューヨークの国連本部を東友会の代表とともに訪ねた2人は、各国の国連大使と面談したり、近隣の学校で証言し、この冊子も届けました。
 帰国後の報告会も多彩に展開。10月にはニューヨークでの活動を記録した「NPT要請代表団報告集」も作成しました。
 2016年、2017年には、核兵器禁止条約に果たした被爆者の役割を学ぼうと、日本被団協事務局次長(当時)の藤森俊希さんや、サーロー節子さんに寄り添って映像を記録しつづけてきた竹内道さんのお話を聞きました。
 フィールドワークとして、丸木美術館(2016年)、ヒロシマ学習ツアー(2018年)、八王子戦跡めぐり(2019年)、ナガサキ学習ツアー(同)などを実施しました。新型コロナ感染が落ち着いたら、みなさんの希望をうかがいながらこれからも企画したいと思っています。

「核兵器のない世界を!」と中央に大きく書かれた横断幕を持ってニューヨークの街路に立つ、東京の被爆者と被爆二世。横断幕には、「私たちは一緒に核兵器のない世界を作ることができる」「東京から来た被爆者」の意味の(少し間違いのある)英文も書かれている。横断幕の余白は寄せ書きになっており、たくさんの人が書いた文で埋められている。
ニューヨークの街を被爆者といっしょに行進する田崎さんと平山さん(2015年4月26日)

被爆者とともに

 「東友」でも報じられているように、東京都の「健康診断受診票 」の所持者は年々増えています。東友会への相談の4割は二世からの健康診断受診票と医療費助成に関するものです。被爆者である親の介護と自身の健康について、東京都に対して施策改善を要望していく取り組みはますます重要になってきます。
 結成時から今日まで、被爆体験の聞き取りや継承は、「おりづるの子」会員が願う活動の中で大きな位置を占めます。このことについては「おりづるの子」会員のメーリングリストでも意見が寄せられています。
 東友会との定期的な話し合いや「おりづるの子」会員の各地区への活動参加などを積み上げ、可能なところから踏み出したいと思います。