被爆者相談所および法人事務所
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2000年発表の抗議・声明など

アメリカの相次ぐ臨界前核実験に抗議します

2000年12月15日

アメリカ合衆国大統領 ウイリアム・J・クリントン様

  • 東京都原爆被害者団体協議会(東友会)

 あなたは、12月15日(日本時間)に、ネバダ核実験場で今年5回目の臨界前核実験を強行しました。
 私たちは10月20日にもこの場に立って、平和を願う生活協同組合のお母さんたちとともに、臨界前核実験の中止と一刻も早い核兵器廃絶の実現を要請しました。
 しかし、あなたが、またも臨界前核実験を強行したことに、私たち原爆被爆者は、深い悲しみと怒りをこめて抗議します。
 「包括的核実験禁止条約(CTBT)に違反しない」「核兵器の維持管理のため」の実験で「環境には影響ない」とういうあなたの発言を、核戦争の被害者である私たちは、断じて認めることはできません。
 どのような理由があろうとも、核兵器の使用につながるあなたのねらいを、許すことはできません。
 私たちの住む東京にも、35年以上原爆後障害で苦しんでいる被爆者がいます。
 小平市に住む松本和子さんは、現在68歳。35年前、突然に駅の階段で倒れました。以後、白血球は1800から2000台で、人の半分位しかありません。
 赤血球は通常の人の15分の1という、わずか9日間で破壊されてしまうため、年に数回は輸血を受けて、命をつないできました。
 輸血の負担のため、肝臓と腎臓が悪くなり、2年前から週3日の人工透析を受けています。
 松本さんはこう話しています。
 「私は、親戚の安否を確かめるために、原爆投下の4日後から4日間、広島に入っただけです。 それだけなのに、人生の半分以上の年月、悪性の貧血で苦しめられています。いろいろな病院に かかりましたが、すべての医師が、『原爆以外に原因は考えられない』と話しています。
 「私たちのような被害者を、もう決してつくらないでください」
 「こんな思いを、世界中の誰にも、決して味あわせたくありません」。いまここに立つ私たち原爆被爆者は、病床から訴える松本さんと同じ思いです。
 私たちは21世紀のために、人類と地球の未来のために、あなたの国が投下した原爆によって殺された40万人を超える人びとの命の重みを背負って、あなたに要求します。

  1. 臨界前核実験計画を白紙に戻し、永遠に中止してください。
  2. NPT再検討会議の「約束」にしたがって、核兵器廃絶への努力をただちに開始し、核兵器廃絶国際条約を結んでください。
  3. CTBTを批准し、すべての核実験計画を破棄してください。
  4. 核兵器の被害の実相を、アメリカ国民に広く知らせてください。

ロシア連邦の相次ぐ臨界前核兵器実験に抗議します

2000年11月7日

ロシア連邦大統領 ウラジミール・プーチン様

  • 東京都原爆被害者団体協議会(東友会)
  • 副会長 田川時彦
  • 副会長 藤平典
  • 副会長 横川嘉範

 11月3日、貴国の原子力省は、またも臨界前核兵器実験をおこなったと発表しました。貴国は、今年だけでも1月に2回、8月から9月かけて3回、そして10月20日と27日、計7回もの臨界前核兵器実験を強行しました。
 これらの暴挙を知るたびに、私たちは、この大使館前に立って、原爆投下からの55年間に殺されていった数十万人の原爆死没者の悲しみと怒りと、いま病床に伏す被爆者の願いを込めて、臨界前核兵器実験の即時中止と核兵器廃絶の国際条約の締結を求めて要請してきました。
 あなたは、核実験場周辺の貴国の住民が、何世代にもわたって、深刻な放射線の被害に呻吟していることをご存知ないのでしょうか。自国民の被害にすら目を向けず、核不拡散条約(NPT)再検討会議での「明確な約束」にもそむき、「包括的核実験禁止条約(CTBT)には抵触しない」という理由で、実験をくり返す貴国の姿勢を、私たちは断じて許すことができません。それは、この実験が、貴国の核実験場周辺の住民と私たちに深刻な被害を与え続けている、核兵器の使用を前提にした開発や研究の手段であるからです。
 核兵器による被害は、決して一時的なものではありません。私たちの相談所に、「原爆被爆者健康手帳」の交付を求めて電話をしてきた被爆者の声です。
 「原爆投下のとき自宅にいた母と2歳だった妹は、家の下敷きになり、黒こげの死体で発見されました。建物疎開に出ていた弟は、死体すらみつけることができませんでした。父は、ヤケドにはウジがわいて、髪の毛が抜け落ち、紫色の斑点が出て、8月末に死にました。
 私は、被爆後5日目に自宅戻りました。父母の妹のあの惨状や死に様を決して思い出したくない、被爆者は結婚もできないと聞き、『被爆者健康手帳』を申請しませんでした。
 しかし、今年はじめに、私もガンにかかりました。主治医は原爆放射線によってガンになった可能性は十分に考えられると言われました」。
 プーチン大統領。あなたは、このような事態が、いまでも起きていることを正しく知るべきです。そして、貴国で同じ不安を持って生きている人びとの実態を正確につかむべきです。
 私たち原爆被爆者は、世界のどこにも、新たな被爆者をつくりだしてはらないとの思いを込めて、あなたに要求します。

  1. 臨界前核兵器実験を永久に中止してください。
  2. すべての核兵器廃絶の国際条約をすぐに結んでください。
  3. 核兵器の生産、保有、実験、使用によるすべての被害者の損害を賠償してください。
  4. 核兵器の被害の実相を、ロシア国民に広く知らせてください。

臨界前核兵器実験を永久に中止するよう要求します

2000年10月20日

アメリカ合衆国大統領 ウイリアム・J・クリントン様

  • 東京都原爆被害者団体協議会(東友会)

 私たちは、1945年8月、広島・長崎に貴国が投下した原子爆弾で被害を受けた原爆被害者です。いま東京には、9319人の被爆者が住んでいます。その被爆者たちに代わって、原爆投下からの55年間に殺されていった数十万人の原爆死没者の怒りを込めて、私たちは、貴国の相次ぐ臨界前核兵器実験に、心の奥底から抗議します。
 貴国は、この実験について、いろいろといいわけをしながら正当化をはかっています。しかしこの実験が、「核兵器の性能を維持するため」であることは認めています。「核兵器の性能を維持する」とは、核兵器を使うことを前提にするものです。
 私たちは、人類初の核戦争を体験した者として、あんな残忍で、非人道で、大量無差別の殺戮兵器はないと断言します。しかも核兵器の被害は、「あの日」「あのとき」だけでなく、半世紀すぎた今日でもなお、続いています。
 きのう、東友会にこんな電話がよせられました。 「先週、4本の左指の骨を折るケガをしました。骨折したところは、リンパ液や血液がしみ出して腫れ上がり、痛みがひどく眠ることもできません。でも、私は手術を受けられません」
 「30歳をすぎた頃から、麻酔や抗生物質をいっさい使えない体になったからです。当時のお医者様から、『原因がわからない。原爆が関係しているのかも知れない』、と言われました」
 「こんな体になったこと、流産を繰り返して子どもが産めなかったこと、すぐに疲れて満足な家事ができないことを、夫に責められてきました」
 「夫はやさしい人でした。でも結婚して10年後くらいから、もう40年近くになりますが、ずっとこんな状態なので、疲れ果てているのだと思います。『被爆者と知っていたら、結婚しなかった』と言われて、何度、死のうと思ったことでしょう」
 「そのたびに、あの原子野で亡くなっていった方たちや、ガンで苦しんでいる被爆者のことを思うと、『自分から死んではいけない』といい聞かせてきました」。
 クリントン大統領。あなたは、このような事態が、いまでも東京で起きていることを正しく知るべきです。知ってなお、核兵器を使おうとするのは、人間を人間と思わない悪魔のしわざです。
 私たち被爆者は、世界のどこにも、新たな被爆者をつくりだしてはらないとの思いを込めて要求します。

  • 臨界前核兵器実験を永久に中止してください。
  • すべての核兵器廃絶の国際条約をすぐに結んでください。
  • 核兵器の生産、保有、実験、使用によるすべての被害者の損害を賠償してください。
  • 核兵器の被害の実相を、アメリカ国民に広く知らせてください。

ロシア連邦の臨界前核実験に抗議します

2000年9月6日

ロシア連邦大統領 ウラジミール・プーチン様

  • 東京都原爆被害者団体協議会(東友会)
  • 副会長 田川時彦
  • 副会長 藤平典
  • 副会長 横川嘉範

 いま、東京・練馬区に住む46歳の「被爆二世」が肺腺ガンのため命を奪われようとしています。ガンは手術ができない部分にあり、肺全体の3分の1に広がっています。さらに、骨に転移して、激しい痛みに苦しみ、歩くこともできなくなっています。放射線治療と化学療法が続いていますが、主治医は診断書に、「半年以内の生命」と記入しています。
 原爆放射線との直接的な因果関係はわかりません。しかし、このような事実にふれるたびに、私たちには眠れない夜が続きます。
 広島・長崎で人類最初の核戦争を体験した私たちは、あの原子野からの55年間、人の生涯の大半という歳月、消しきれない記憶と不安のなかで過ごしてきました。地獄と化した「あの日」、急性原爆症で次つぎと斃れた人びと、ガンで白血病で亡くなっていった人びとの記憶。そして、「いつわが身」という原爆放射線の後障害への不安。
 「こんな思いを決して誰にも味あわせたくない」という思いから、私たちは、すべての核兵器保有国に核兵器の完全禁止を要求してきました。
 ロシア政府に対しても、臨界前核実験を開始した1998年12月から、「臨界前核実験の即時中止を」「核兵器廃絶国際条約を一刻も早く」と要請し、今年2月5日にもこのロシア大使館の前に立って、いまも原爆放射線に苦しめられている被爆者として抗議をしてきました。
 しかし、ロシア原子力省は、一昨日、8月28日から9月3日かけて、またもノバヤゼムリァ島の核実験場で3回もの臨界前核実験を強行したと発表しました。広島・長崎で人類最初の核戦争を体験させられた私たち原爆被爆者は、あなたの暴挙に、深い悲しみと怒りをこめて抗議します。
 「核兵器の信頼性と性能維持が目的」というあなたの発言を、私たちは、断じて認めることはできません。どのような理由があろうとも、核兵器の使用につながるあなたのねらいを、許すことはできません。
 私たちは、平和な21世紀のために、人類と地球の未来のために、あなたに要求します。

  1. 臨界前核実験を永遠に中止し、核兵器開発計画を廃棄してください。
  2. 国連総会とNPT再検討会議の「約束」にしたがって、核兵器廃絶への努力をただちに開始し、核兵器廃絶国際条約を結んでください。
  3. 核兵器の被害の実相を広く知らせ、セミパラチンスクなどの核実験被害者に、国家として補償してください。

アメリカの相次ぐ臨界前核実験に抗議します

2000年8月18日

アメリカ合衆国大統領 ウイリアム・J・クリントン様

  • 東京都原爆被害者団体協議会(東友会)
  • 副会長 田川時彦
  • 副会長 藤平典
  • 副会長 横川嘉範

 あなたは、8月18日(日本時間)に、またも「オーボエ5」と名付けた臨界前核実験を強行しました。
 私たちの願いを踏みにじって、あなたが12回もの臨界前核実験を続けていることに、原爆に苦しめられた年月の重みを込めて抗議します。
 「核爆発を伴わないから、包括的核実験禁止条約(CTBT)に違反しない」「核兵器の信頼性を高める」とういうあなたの発言を、核戦争の被害者である私たちは、断じて認めることはできません。どのような理由があろうとも、核兵器の使用につながるあなたのねらいを、許すことはできません。
 20世紀最後の8月6日、9日、ヒロシマ・ナガサキの「あの日」を、私たちは55年過ぎても消しきれない記憶のなかで過ごしました。
 家の下敷きになって炎の中で苦しむ人びと。焼けただれた身体で手を差し出す人。「水、水を」という断末魔の声。無キズの人が突然に血を吐いて亡くなる姿。ヤケドに蛆がわいて苦しむ人びと。
 そして、放射線の被害が「いつわが身に」と苦しみ悩む人びと。白血病で、ガンで殺されていった人びとの記憶が、いまもまざまざと思い出されます。
 あなたの国が投下した原子爆弾による苦しみは、薄れるどころか、現在もますます深まっています。そして、私たちは子孫への影響にも苦しめられています。
 7月26日に東京・武蔵野市に住む51歳の「被爆二世」が亡くなりました。病名は肺ガンでした。息子をガンで失った75歳の母は、爆心地から2.5キロの地点で被爆していました。原爆放射線との具体的な因果関係はわかりません。しかし、このような事実にふれるたびに、私たちには眠れない夜が続きます。
 「こんな思いを決して誰にも味あわせたくない」という願いから、私たちは21世紀のために、人類と地球の未来のために、あなたの国が投下した原爆によって殺された40万人を超える人びとの命の重みを背負って、あなたに要求します。

  1. 臨界前核実験計画を白紙に戻し、永遠に中止してください。
  2. CTBTを批准し、すべての核実験計画を破棄してください。
  3. NPT再検討会議の「約束」にしたがって、核兵器廃絶への努力をただちに開始し、核兵器廃絶国際条約を結んでください。
  4. 核兵器の被害の実相をアメリカ国民に広く知らせてください。

アメリカの相次ぐ臨界前核実験に抗議します

2000年4月7日

アメリカ合衆国大統領 ウイリアム・J・クリントン様

  • 東京都原爆被害者団体協議会(東友会)
  • 副会長 田川時彦
  • 副会長 藤平典
  • 副会長 横川嘉範

 あなたが世界の世論を踏みにじって強行した2月の臨界前核実験の際にも、3月の実験の際にも、私たちはここアメリカ大使館の前に立ち、抗議に参加したひとり一人がマイクを持って、広島・長崎でのあの地獄の体験と核兵器廃絶への願いを訴えました。
 そして、1997年7月にあなたが初の臨界前核実験を強行したときから、この場に立てない病床にある被爆者や原爆放射線によって殺された被爆者の姿を知らせ、臨界前核実験の即時中止と核兵器廃絶への具体的な行動を求めてきました。
 しかしあなたは、「オーボエ4」と名付けた11回目の臨界前核兵器実験を、ネバダ核実験場で強行しました。毎月繰り返されるこの暴挙に対し、私たち東京在住の原爆被爆者は、深い悲しみといきどおりを込めて抗議します。
 「あの日」から55年を迎えようとしている現在も、被爆者は原爆放射線のために殺され続けています。昨日も東京・中野区に住む被爆者が膵臓ガンのために亡くなりました。みずからの不安や病魔と闘いながら、苦しむ被爆者の相談相手となって30年以上も活躍してきた人でした。
 そして、広島・長崎の原爆地獄からかろうじて生き残っている私たちも、原爆の後障害が、いつ「わが身に」「わが子に、子孫に」という不安と苦しみにさいなまれ続けています。
 「核爆発は伴わないから、包括的核実験禁止条約(CTBT)に違反しない」とういうあなたの発言を、核戦争の体験者である私たちは断じて認めることはできません。どのような理由があろうと、許すことはできません。
 半世紀以上も人間を殺し続け、苦しめ続ける核兵器は、「絶対悪の兵器」です。決して人類と共存できない「悪魔の兵器」です。
 私たちは、21世紀のために、人類と地球の未来のために、あなたの国が投下した原爆によって殺された30万人を超える人びとの命の重みを背負って、あなたに要求します。

  1. 臨界前核実験計画を白紙に戻し、永遠に中止してください。
  2. 包括的核実験禁止条約を批准し、すべての核実験計画を破棄してください。
  3. 人類の未来のために、核兵器廃絶の具体的な態度を示し、核兵器廃絶国際条約締結のための努力を、ただちに開始してください。
  4. 核兵器の被害の実相をアメリカ国民に広く知らせてください。

アメリカの臨界前核兵器実験に抗議します

2000年3月24日

アメリカ合衆国大統領 ウイリアム・J・クリントン様

  • 東京都原爆被害者団体協議会(東友会)
  • 副会長 田川時彦
  • 副会長 藤平典
  • 副会長 横川嘉範

 あなたが10回目の臨界前核兵器実験を強行したことに、私たち東京在住の原爆被爆者は、深い悲しみと怒りをこめて抗議します。
 3月3日、私たち東友会の会長・伊東壯がガンの転移のために亡くなりました。会長は、広島の爆心地から5キロ地点で被爆し、当日から爆心地付近の自宅跡に戻り肉親を捜したため、急性症状に苦しみました。死因は、被爆49年目発見され切除した「膀胱ガン」が、6年間で肝臓、肺、気管支にまで転移したためでした。
 同じ日に、主治医が原爆放射線の影響によるものだと診断した「悪性リンパ腫」のために、大田区の被爆者も亡くなりました。広島の爆心地から4キロの地点で被爆し、当日から3カ月間、市内の中心部で救援・復興作業に従事していました。「悪性リンパ腫」が発見されたのは、被爆から51年目の1996年。その後4年間の命でした。
 広島・長崎への原爆投下から55年を迎えようとしている現在も、被爆者は次々に原爆で殺され続けています。そして、「原爆の後障害が、いつわが身に」「わが子に」という不安と苦しみは、私たち被爆者だけでなく、子どもたちに、孫たちにも残されていきます。
 半世紀以上も人間を殺し続け、苦しめ続ける核兵器は、「絶対悪の兵器」です。決して人類と共存できない「悪魔の兵器」です。
 しかしあなたは、インドやパキスタンを訪問し、片手で、自国が批准を拒否したCTBT(包括的核実験禁止条約)の批准を押しつけ、もう片方の手で、核兵器の性能を高める臨界前核実験を繰り返し、これを武器に世界支配を続けようとしています。
 このようなあなたの横暴を、私たち被爆者は断じて許すことはできません。
 新しい世紀は目前です。
 私たちは、21世紀のために、人類と地球の未来のために、あなたに要求します。

  1. 臨界前核実験計画を白紙に戻し、永遠に中止してください。
  2. 包括的核実験禁止条約を批准し、すべての核実験計画を破棄してください。
  3. 人類の未来のために、核兵器廃絶の具体的な態度を示し、核兵器廃絶国際条約締結のための努力を、ただちに開始してください。
  4. 核兵器の被害の実相をアメリカ国民に広く知らせてください。

ロシアの臨界前核兵器実験に抗議します

2000年2月5日

ロシア連邦大統領代行 ウラジミール・プーチン様

  • 東京都原爆被害者団体協議会(東友会)
  • 会長 伊東壯

 昨日、ロシア原子力省は、北極海のノバゼムリア島の核実験場で、1月8日に2回も臨界前核兵器実験を強行したと発表しました。この暴挙にたいして、私たち東京在住の原爆被爆者は、深い悲しみと怒りをこめて抗議します。
 私たちは「忘れたい」「思い出したくない」という葛藤のなかで、あの「地獄」の体験を語り、「核兵器の開発をやめてください」「核兵器をなくしてください」と、訴え続けてきました。
 それは、55年前の広島・長崎の核戦争で無惨に殺された人々、その後放射線の後障害で亡くなった人々と、私たち自身の姿と思いを伝え残すことが、未来に対する責任であり、「ふたたびヒロシマ・ナガサキをくり返させない」ための確かな証しだと考えてきたからです。
 世紀末になって、この私たちの願いは、人類共通の願いとして広がりました。
 昨年5月にオランダのハーグで開かれた世界市民平和会議は、核兵器廃絶条約の促進をアジェンダに掲げました。11月の国連総会でも核保有国に対して核兵器廃絶の誓約を求める決議が圧倒的多数で可決されました。
 しかし、あなたの国は昨年9月以後7回もの臨界前核兵器実験をかさね、核兵器の開発を強化し続けています。
 昨年、東海村の原子力発電所で臨界事故が起き、被曝した作業員の一人が亡くなりました。この事実は、私たちを55年前に引き戻しました。
 「被爆から1カ月後に亡くなった母も、同じような死に様でした」
 「あの原子野を思い出してしまって、眠れない夜が続いています」
 「私の身体に、いつ放射線の影響がでるのかと不安でなりません」
 核兵器実験が強行されるたびに、原子力発電所の事故が報道されるたびに、このような不安の声が、私たちの相談所に多数寄せられます。
 核兵器のために、苦しめられているのは私たち日本の被爆者だけではありません。
 あなたの国の核開発に立ち会わされた人々も、核実験場付近の住民も、そして、世界の核兵器実験被害者も、私たちと同じような思いを抱いて、不安な日々を送っています。
 新しい世紀は目前です。
 私たちは、21世紀のために、人類の未来のために、あなたに要求します。

  1. 臨界前核実験を永遠に中止してください。
  2. 核兵器廃絶国際条約締結のための努力を、ただちに開始してください。
  3. 核兵器の被害の実相を広く知らせ、セミパラチンスクなどの核実験被害者に、国家として補償してください。

アメリカの臨界前核兵器実験に抗議します

2000年2月4日

アメリカ合衆国大統領 ウイリアム・J・クリントン様

  • 東京都原爆被害者団体協議会(東友会)
  • 会長 伊東壯

 あなたがまたも強行した臨界前核兵器実験に、私たち東京在住の原爆被爆者は、深い悲しみと怒りをこめて抗議します。
 私たちは「忘れたい」「思い出したくない」という葛藤のなかで、あの「地獄」の体験を語り、「核兵器の開発をやめてください」「核兵器をなくしてください」と、訴え続けてきました。
 それは、55年前の広島・長崎の核戦争で無惨に殺された人々、その後放射線の後障害で亡くなった人々と、私たち自身の姿と思いを伝え残すことが、未来に対する責任であり、「ふたたびヒロシマ・ナガサキをくり返させない」ための確かな証しだと考えてきたからです。
 世紀末になって、この私たちの願いは、人類共通の願いとして広がりました。
 昨年5月にオランダのハーグで開かれた世界市民平和会議は、核兵器廃絶条約の促進をアジェンダに掲げました。11月の国連総会でも核保有国に対して核兵器廃絶の誓約を求める決議が圧倒的多数で可決されました。
 しかし、あなたは9回もの臨界前核兵器実験をかさね、核兵器の開発を強化し続けています。
 昨年、東海村の原子力発電所で臨界事故が起き、被曝した作業員の一人が亡くなりました。この事実は、私たちを55年前に引き戻しました。
 「被爆から1カ月後に亡くなった母も、同じような死に様でした」
 「あの原子野を思い出してしまって、眠れない夜が続いています」
 「私の身体に、いつ放射線の影響がでるのかと不安でなりません」
 核兵器実験が強行されるたびに、原子力発電所の事故が報道されるたびに、このような不安の声が、私たちの相談所に多数寄せられます。
 核兵器のために、苦しめられているのは私たち日本の被爆者だけではありません。
 あなたの国の核兵器実験に立ち会わされた軍人たちも、実験場付近の住民も、風下地域に住んでいた人びとも、そして、世界の核兵器実験被害者も、私たちと同じような思いを抱いて、不安な日々を送っています。
 新しい世紀は目前です。
 私たちは、21世紀のために、人類の未来のために、あなたに要求します。

  1. 臨界前核実験計画を白紙に戻し、永遠に中止してください。
  2. 包括的核実験禁止条約を批准し、すべての核実験計画を破棄してください。
  3. 人類の未来のために、核兵器廃絶の具体的な態度を示し、核兵器廃絶国際条約締結のための努力を、ただちに開始してください。
  4. 核兵器の被害の実相をアメリカ国民に広く知らせてください。