被爆者相談所および法人事務所
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おりづるの子(東京被爆二世の会) 学ぶことを重視して 結成10周年の年

 「おりづるの子」結成10周年を迎えた2023年は、原爆被害・被爆体験をどう継承するかについて、学習会を重ねてきました。

会員一人ひとりが語ること

 6月の総会では、自らの家族の体験を語るということで、おりづるの子の澤原義明副会長が、「健康といのち│白血病で逝った母の思いを継いで」と題して講演しました。
 澤原副会長の母・とし子さんは、被爆から13年目、36歳で亡くなりました。澤原さんは、母の手による「ある白血病患者の手記」(雑誌『世界』1958年8月号掲載)や関係する当時の新聞記事などを示しながら、元気で家族のもとに帰りたいという願いを断ち切った原爆症の恐ろしさ、そのおおもとにある原爆の非人間性を語りました。

全国の二世・三世の会とつながる

 10月には、東京以外の地域の二世の会から学ぶという目的の学習会を開催。京都「被爆二世・三世の会」の世話人代表・平信行さんを講師に迎え、お話しいただきました。
 京都の会は2012年10月、高齢化の進む被爆者組織をなんとかしたいという被爆者の思い、運動の後継をという話し合いから誕生しました。当初から「三世」を会の名称に入れ、また京都以外に住んでいる方の参加もあるそうです。被爆体験の継承と社会への発信を活動の柱の1つとして、京都の被爆者の体験を可能な限り記録し、遺す活動を続けています。2013年からこれまで98人の証言を『語り継ぐヒロシマ・ナガサキの心』にまとめています。
 このほか、おりづるの子の青木克明会長が、「被爆者二世プラスの会北海道」の活動のようすを報告し、日本被団協二世委員会の濱住治郎さんから全国調査にもとづいた二世の会の実態を聞き、全国の二世・三世の会がさまざまな形で活動していることを知ることができました。
 参加者からは、「被爆体験伝承の活動を始めたいと思って参加しました。自分のできることを考えたいと思います」などといった感想が寄せられました。

被爆体験の継承

 そして12月。広島の被爆体験伝承者の養成研修を修了した野田信枝さん(当会会員)が、故・末岡昇さんの被爆体験にもとづいて講話をおこないました。原爆とはどんな兵器か、人間、都市、環境に与える被害、脅威といった基本的な事柄を、子ども・若者にも理解できるように組み込んで、末岡さんの被爆体験とその後の人生をていねいに語りました。
 講話の後、参加者と意見交換をおこないました。この伝承者養成のようすに関する質問もありました。「原爆そのものについての説明に具体的な数字や内容が含められていて、その激しさや強さがわかりやすいと思いました。新たな学びとなりました」といった感想がありました。
 なお、これらの学習会は、一般にも参加を呼びかけ、実際に会員ではない方の参加もありました。

10年のあゆみと会員の思いを記録する

 現在、10周年記念誌の発行をめざして、会員や他県の二世・三世の会から原稿を寄せていただいています。
 子どもの頃、ケガが化膿すると「私の被爆のせいだ」と言った母の言葉、おりづるの子結成に尽力され鬼籍に入ってしまった方との思い出、1954年11月3日に公開された第1作「ゴジラ」から反核の意志を学んだという被爆三世など、それぞれの立場で会員から原稿が届いています。
 核兵器廃絶と平和を希求する思いをもって「10年のあゆみ」をまとめたいと思います。

学習と継承

 年4回ほど発行している会報では、随時、二世としての思いを掲載し、会員相互が理解を深め合えるようにしています。
 第36号(2022年10月発行)では、山田猛さんが美術を通して核兵器による人類の危機と平和を世界に伝えていく展覧会を実現したいとの思いを執筆。中村雅子さんは、この手に直接祈りを託された者として、人類の犯した大きな過ちを、単なる情報として風化させないための手助けができないか、と述べています。
 2022年12月10日には、2003年の長崎の平和祈念式典で「平和への誓い」を手話で述べた山﨑榮子さんの映像を視聴し、原爆の情報を得ることができなかった方のことを考え、親の被爆体験などを語り合いました。
 これからも、紙上や学習会でこうした交流を続けていく計画です。

会場前方、大型モニタに映像を表示しながら、演台に立って一人が話をしている。並べられた長机に着席した参加者たちが、メモを取るなどしながらそれを聴いている。
2023年12月に開かれた伝承者の講話の学習会
長方形につなげて並べられた机に着席した参加者たち。一人がマイクを使って話している。
)伝承者の講話の学習会後の意見交換の場面