ノーモア・ヒバクシャ訴訟 名古屋高裁 原告2人が逆転勝訴
経過観察必要なら要医療性あり

 2018年3月7日、高等裁判所がまたも厚生労働省の原爆症認定基準を断罪しました。
 名古屋高等裁判所民事第4部(藤山雅行裁判長)が、2016年9月14日に名古屋地方裁判所が出した判決を取り消し、2人の長崎の被爆者を原爆症と認める逆転勝訴判決を言い渡したのです。
 この裁判の争点は「要医療性」。地裁の判決は、二人の申請疾病について放射線起因性を認めながら、原爆症認定のもう一つの要件である「要医療性」について再発や悪化の可能性が高いなどの状態にない限り、定期検査を受けていても「医療」には当たらない」と否定していました。
 しかし高裁判決は、『(被爆者援護法10条)の「医療」は、積極的な治療を伴うか否かを問うべきではなく、被爆者が経過観察のために通院している場合であっても、認定に係る負傷又は疾病が「現に医療を要する状態にある」と認めるのが相当である』としました。
 肺がんと乳がんで申請した原告について裁判所は、厚生労働省健康局長が2014年3月20日に出した通知をあげ、「手術日から原爆症認定申請日までの期間が約9年4か月で10年経過しておらず」「再発のリスクが否定できない」と判断し、乳がんについて「要医療性」を認めました。
 慢性甲状腺炎(橋本病)の原告については、甲状腺機能低下症と診断される前の橋本病の放射線起因性を認めた地裁の判断を支持した上で、申請時に経過観察の必要性があったとしました。
 弁護団と原告団は、この判決は、「被爆者を救済するという被爆者援護法の趣旨を正確に解釈した判断であり、要医療性を狭くとらえている国の運用を厳しく批判したもの」と評価しています。
 3月7日、東友会の大岩孝平代表理事などと原告団の綿平敬三さんは、日本被団協代表、弁護団の宮原哲朗、中川重徳弁護士とともに厚労省に上告するなと要請。その後、厚労省の記者クラブで会見をおこないました。
 3月27日には東京高裁が6人の原告についての判決を言い渡します。東友会は、東京高裁でも勝利して、認定制度の抜本改善を求める運動をすすめることにしています。

2018年3月7日名古屋高裁判決の原告一覧
原告 地裁判決
(判決日)
高裁判決
(判決日)
申請病名 性別 被爆地 被爆状況
直爆距離 入市日
名古屋A 敗訴(2016.09.14) 勝訴(2018.03.07) 白内障 長崎 5.4キロ 当日に爆心地より約2キロに入市
名古屋B 敗訴(2016.09.14) 勝訴(2018.03.07) 白内障 長崎 5.4キロ 当日に爆心地より約2キロに入市

「要医療性」とは

 原爆症と認定され「医療特別手当」を受ける条件、および同手当の継続条件として、「要医療性」が求められています。
 「要医療性」とは、原爆症として認定申請した疾病が、現に医療が必要な状態であることをいいます。たとえば、以前に胃がんになったが、いまは完治しているような場合、認定審査で「要医療性」は認められません。
 いったん認められた「医療特別手当」の継続については、概ね次のような要件になっており、3年に一度「健康状況届」を提出することが求められています。

がん、白血病など悪性腫瘍など

 手術や制がん剤、放射線治療、ホルモン療法などの根治的な治療がおわって5年以上すぎて再発していない人は、基本的に、医療特別手当を継続できません。
 乳がん、腎盂がん、尿管がん、膀胱がん、前立腺がん、甲状腺がんの場合は、治療が終わってから10年以内は、継続できる場合があります。
 治療が終わっていても、手術や治療の後遺症のために医師から治療を受けている人、介護などが必要になった人は継続できる場合があります。 末期の悪性腫瘍などで治療が困難な人も継続できます。

心筋梗塞、肝機能障害、甲状腺機能低下症

 医師の診察を定期的に受けていて、治療するための薬が処方がされていれば、継続できます。症状が安定して、薬が出ていない場合でも、定期的に診察を受け、検査を受けている人は、継続できる場合があります。

原爆白内障

 白内障は、眼内レンズを入れる手術だけが「治療」とされています。
現在の審査では、点眼薬をさしているだけでは継続できせん。

厚労省内の一室で、対面した席に着く被爆者側代表、弁護団と厚労省側代表。
上告するなと厚労省に要請