ノーモア訴訟で3つの判決

1月16日大阪高裁 地裁判決を追認し3人勝訴、3人敗訴

 ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟控訴審の判決が2018年1月16日、大阪高裁第2民事部であり、原告6人のうち甲状腺機能低下症の3人が勝訴し、心筋梗塞、狭心症、熱傷瘢痕の3人が敗訴しました。(別表:大阪a~大阪f)
 これは、地裁判決と同様、甲状腺機能低下症については放射線起因性を認めたものの、他の疾病については、「低線量被爆の影響を一般的に肯定できる例があるとしても、他の原因による発症を検討する必要がない程度までにその影響が高かったとは認められない」として、原告の訴えを退け、一審の地裁判決を追認したものです。
 この高裁判決の日、東友会の大岩孝平代表理事と家島昌志執行理事、原告団の綿平敬三さんらは弁護団とともに厚労省を訪ね、勝訴原告を上告せず、判決の趣旨に添って審査方針を改善するよう要請しました。
 この判決で勝訴した甲状腺機能低下症の原告3人について厚生労働省は上告せず原爆症と認定しました。これは、甲状腺機能低下症に対する厚労省のこれまでの基準「約2キロ以内直接被爆・翌日までに約1キロ以内入市」を、がんや白血病の基準「約3.5キロ直接被爆・約100時間以内に約2キロ以内入市」まで認めた大阪高裁の判断を、厚労省に認めさせたものです。
 地裁と高裁で敗訴した原告の3人は、最高裁に上告しました。

2018年1月16日高裁判決の近畿訴訟原告一覧
原告 地裁判決
(判決日)
高裁判決
(判決日)
申請病名 性別 被爆地 被爆状況
直爆距離 入市日
大阪a 敗訴(2015.01.30) 敗訴(2018.01.16) 狭心症 広島 2.4キロ ――
大阪b 敗訴(2015.01.30) 敗訴(2018.01.16) 熱傷瘢痕(ケロイド) 広島 1.7キロ ――
大阪c 勝訴(2015.01.30) 勝訴(2018.01.16) 甲状腺機能低下症(慢性甲状腺炎) 長崎 3.7キロ 8月12日
大阪d 勝訴(2015.01.30) 勝訴(2018.01.16) 甲状腺機能低下症 長崎 4キロ 8月11日
大阪e 敗訴(2015.01.30) 敗訴(2018.01.16) 心筋梗塞・労作性狭心症 長崎 2.5キロ 8月11日
大阪f 勝訴(2015.01.30) 勝訴(2018.01.16) 甲状腺機能低下症 広島 3キロ 8月7日
申し入れする被爆者代表と、メモをとりながら聞く厚労省側代表。弁護団も席に着いている。机は長方形に並べられている
「上告するな」と厚労省へ申し入れる被爆者代表と弁護団(1月16日)

1月23日大阪地裁 心筋梗塞と原因は同じと狭心症を認定

 1月23日、大阪地裁第7民事部で労作性狭心症で原爆症認定申請した原告1人に対する判決があり、原告が勝訴しました。(別表:大阪g)
 この判決の画期的な点は、「粥状動脈硬化症を主因として発症するという機序において本症状は心筋梗塞と同様である」として、狭心症で申請した原告の訴えを認めたところにあります。
 厚労省への申し入れでは、日本被団協の田中煕巳代表委員と東友会の大岩代表理事などが「心筋梗塞なら、厚生労働省の基準の範囲だ」「狭心症が重くなると心筋梗塞になることは素人でも知っている。絶対に控訴するな」と要請。厚労省はこの判決を受け入れ、原告を原爆症と認定しました。
 この判決でも、審査方針に入っていない「労作性狭心症」を、地裁判決のみで認めさせたという大きな成果を挙げました。

2018年2月23日大阪地裁判決の原告
原告 地裁判決
(判決日)
高裁判決
(判決日)
申請病名 性別 被爆地 被爆状況
直爆距離 入市日
大阪g 勝訴(2018.01.23) ―― (地裁判決確定) 労作性狭心症 長崎 1.8キロ ――
「勝訴」「認定行政改めよ」のそれぞれの幕を持つ弁護士二人と、その隣で集まった人たちに頭を下げる原告。写真奥側、弁護士と原告の背後には、メッセージの書かれた横断幕を掲げる人々。手前にはテレビカメラを回すマスコミ関係者など
大阪地裁前で勝利を喜ぶ原告と支援者、弁護団(1月23日)

2月9日広島高裁 現行基準超えた被爆距離の白内障を認定

 2月9日、ノーモア・ヒバクシャ広島訴訟でも広島高裁が、白内障と放射線の影響、要医療性について厚労省の審査方針を否定する判断を下しました。
 生後11カ月のとき、厚労省の基準1.5キロ直接被爆を大幅に超えた2.4キロ地点で被爆した原告(別表:広島B)については、47歳で白内障を発症したことと、点眼薬だけの治療でも「悪化の状況に応じて的確な治療行為」が実施されているとして、地裁の判決どおり放射線起因性と要医療性の条件を認めました。
 しかし、3キロ地点で被爆した原告(別表:広島A)については、「健康に影響を及ぼす程度の放射線」を浴びたことは認めましたが、67歳で発症した白内障であることから、地裁判決と同じく放射線起因性を認めませんでした。
 この判決についても、東友会は原告団、弁護団、日本被団協ともに判決の日に厚労省に申し入れをおこない、原爆症認定制度の抜本改定を要求しました。

2018年2月9日高裁判決の広島訴訟原告一覧
原告 地裁判決
(判決日)
高裁判決
(判決日)
申請病名 性別 被爆地 被爆状況
直爆距離 入市日
広島A 敗訴(2015.05.20) 敗訴(2018.02.09) 白内障 広島 3キロ 8月6日
広島B 勝訴(2015.05.20) 勝訴(2018.02.09) 白内障 広島 2.4キロ ――
立ち上がって申入書を受け取った厚労省側代表と、申し入れの内容について述べる被爆者側代表。ほかに着席した被爆者側代表、弁護団も。厚労省側代表と被爆者側代表は対面した席についている。
厚労省へ申し入れ(2月9日)