原爆症の認定申請 要件に当てはまる人はあきらめず申請を
本紙でもたびたび紹介してきましたが、最近の傾向をふまえつつ、あらためて説明します。
原爆症認定制度とは
原爆症認定制度とは、申請者の病気やけがを、厚生労働大臣が原子爆弾の放射線に起因するものであると認める制度です。
従来からあった認定制度は、認定基準が極めて厳しく、申請しても認められるケースが非常に少ないのが実情でした。2003年から全国の被爆者が弁護団・医師団と支援の方がたの協力を得てたたかってきた原爆症認定集団訴訟、ノーモア・ヒバクシャ訴訟の成果で、以前よりは認定基準が広がりました。
原爆症認定の要件は2つ
原爆症と認定される要件は、1「放射線起因性」と2「要医療性」の2つです。この2つの要件に当てはまるとき、「原爆症」と認定されます。認定された病気の医療費は、医療保険の給付を使わずに国が全額を負担し、合わせて毎月14万1900円(2022年度額)の「医療特別手当」が支給されます。
原爆症の認定と継続のための2つの要件
- 「放射線起因性」は、その疾病の原因が原爆放射線によるものであると考えられること。
- 「要医療性」は、その疾病が現に医療を必要とする状態にあること。
この2つを満たすことが求められます。
被爆条件 | 指定病名 |
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「放射線起因性」の注意点
厚生労働省は、申請病名ごとに基準として定めた被爆距離や入市の期間(別表)に該当しない申請をほとんど機械的に却下しています。
被爆距離は被爆者手帳に書かれた内容が基準になりますが、一部に入市した事実が抜けていたり、誤った距離が書かれている場合があります。このようなとき、申請前に修正の対応が必要です。
指定病名 | 要件 |
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手術、制がん剤、放射線療法やホルモン療法が終わった後、ほぼ5年以内。 乳がん、腎盂がん、尿管がん、膀胱がん、前立腺がん、甲状腺がんなどは、10年以内でも認定される場合があります。 |
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定期的に医師の診断を受けて治療や経過観察を続けているあいだ。 |
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手術を予定していて、手術前の場合。 |
「要医療性」の注意点
原爆症と認定されるためには、申請する病気などが申請時に「医学的管理が必要」な状態(現在医療を必要とする状態)にあるか、治癒能力が放射線の影響を受けている場合とされています。
がんの場合、医師による経過観察が続いていても、がんが再発していなければ、5年または10年で「要医療性」がないと判断されます。手術で完全に切除できた浅い皮膚がんなどは「要医療性」が認められない場合もあります。
放射線白内障は、手術だけが治療とされ、手術を予定していて手術前であることが条件とされています。手術後の状態では、もはや「要医療性」がないと判断されます。
申請に必要な書類
原爆症認定申請には、次の書類が必要です。
- 申請者が用意するもの
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申請者が書く、またはコピーをとって用意します。
- 認定申請書
- 医療特別手当認定申請書
- 被爆者手帳の写し(コピー)
- 申請者がかかっている医師・医療機関から提出されるもの
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「要医療性」の審査に影響します。
近年は追加の資料提出を何度も求められるなど国からの「照会」事例が増えています。- 医師の「意見書」
- 申請する病気の証明になる検査結果報告票と治療状況がわかる書類の写し
申請の提出と流れ
原爆症認定の申請窓口は、申請者の住む都道府県か広島市・長崎市です。そこから申請者の被爆者手帳申請時の書類のコピーを添付して厚生労働省に送られ、同省の「原子爆弾被爆者医療分科会」で審査されます。そのため、審査結果が出るまで3カ月から半年程度かかることがあります。認定されると、申請した月の翌月に遡って「医療特別手当」が支給されます。
更新も忘れずに
この手当には更新(「健康状況届」提出)があり、医師の診断書など医療状況に関する書類の提出が求められます。更新時に「要医療性」がないと判断されれば、「特別手当」(毎月5万2400円:2022年度額)に切り替えられます。
申請や更新の手続きにあたっては、ぜひ東友会にご相談ください。