被爆者の医療費 「無料になる」ことの意味は
被爆者本人からではなく、家族などからの相談が多くなっていますが、「被爆者は医療費が無料」の意味を勘違いされているケースがありますので、改めて説明します。
無料になるのは医療保険の自己負担分
被爆者が医療機関で被爆者手帳を見せれば医療費が「無料」になるのは、公的な医療保険(健康保険)の自己負担分が「被爆者の制度」で助成されるため、窓口で支払わなくていいからです。
諸事情から、いったんは窓口での支払いが必要になっても、そのときの領収書があれば、あとから都道府県に払い戻しの請求ができます。
ただし、公的な医療保険でカバーされていない費用、例えば入院時の食事代や差額ベッド代、診断書料、医療保険外の自費治療などは、「被爆者の制度」では助成されないため、被爆者手帳を見せても無料にはなりません。
医療保険の種類は異なっても仕組みは同じ
公的な医療保険には、勤務先の会社等で加入している健康保険、国民健康保険、共済組合などがあります。高齢者医療に特化した後期高齢者医療制度もあります。それぞれ細かな違いはありますが基本的な仕組みは同じです。
医療保険の仕組みは、毎月一定の保険料を払うことで、実際に医療を受けたときの費用のうち9割から7割が医療保険によってまかなわれ、残りの1割から3割を自己負担分として本人が医療機関の窓口で支払う、というものです。自己負担の割合(1割から3割)は、所得などの条件によって変わります。
病院で受けた検査の実費が1万円かかった場合、医療保険で7000円(7割)がまかなわれ、残りの3000円(3割)を本人が支払う、といった具合です。
医療保険と「被爆者の制度」のおもな関係
医療保険が適用される医療費の実費
(例:10,000円)
医療保険でまかなわれる部分
(例:7,000円)
医療保険の保険料を滞納するなどして資格を失った場合、この部分も支払いが必要になります。被爆者手帳を持っていることを理由に、医療費の全額が自動的に「無料になる」わけではないことに注意してください。
自己負担分
(例:3,000円)
通常はこの費用を窓口で払います。被爆者はこの部分が助成されるため、医療保険の資格があれば窓口での支払いはなくなります。これが、「被爆者は医療費が無料」といわれるものです。
医療保険(健康保険)でカバーされない治療やサービスを受けた場合は、医療保険への加入・未加入、および被爆者手帳の有無に関わらず、全額支払いが必要です。