原爆症認定制度 がんなどの病気の被爆者は積極的に申請を
最近、がんが進行して重体になっている被爆者の家族から「何か援助を受けられませんか」という相談が続いています。死亡の連絡が遺族からあり、死因と被爆状況を聞くと、原爆症認定を出せば認定されていた被爆者も数多くみられます。
原爆症認定を受けると受給できる毎月14万円を超える医療特別手当の額は、国が生活補償の意味を込めて高校卒業の公務員の初任給を目安にして決めたと言われています。
2003年から全国の被爆者が弁護団、医師団と支援の方がたの協力を得てたたかってきた原爆症認定集団訴訟、ノーモア・ヒバクシャ訴訟の17年間の成果で、審査基準は広がっています。一人でも多くの被爆者がこの制度を活用できるように、あらためて説明します。
認定の要件は2つ
原爆症認定の要件は、「放射線起因性」と「要医療性」の2つです。その内容を表にまとめました。
この2つの要件が認められたとき、「原爆症」と認定されます。認定された病気の医療費は健康保険の給付を使わず全額国が負担し、合わせて毎月14万円余(2019年度額)の「医療特別手当」が支給されます。
原爆症の認定と継続のための2つの要件
- 「放射線起因性」は、その疾病の原因が原爆放射線によるものであると考えられること。
- 「要医療性」は、その疾病が現に医療を必要とする状態にあること。
この2つを満たすことが求められます。
指定病名 | 被爆条件 |
---|---|
|
|
|
|
|
|
「放射線起因性」の注意点
厚労省は、申請病名ごとに基準として定めた被爆距離や入市の期間を超えた被爆者の申請を、ほとんど機械的に却下しています。
被爆距離は被爆者手帳に書かれた内容が基準になります。ただ一部に、入市した事実が抜けていたり、間違った距離が書かれていることがあります。このような場合は、事前に対応することが必要です。
指定病名 | 要件 |
---|---|
|
手術、制がん剤、放射線療法やホルモン療法が終わった後、ほぼ5年以内。 乳がん、腎盂がん、尿管がん、膀胱がん、前立腺がん、甲状腺がん、肝臓がんなどは、10年以内でも認定される場合があります。 |
|
定期的に医師の診断を受けて治療を続けているあいだ。 |
|
手術を予定していて、手術前の場合。 |
「要医療性」の注意点
原爆症と認定されるには、申請する病気などが、申請時に「医学的管理が必要」な状態にあるか、治癒能力が放射線の影響を受けている場合とされています。
がんで申請する場合は注意してください。医師による経過観察が続いていても、がんが再発していなければ、5年または10年で「要医療性」がないと判断されます。手術で取り切れた浅い皮膚がんなどは「要医療性」が認められない場合もあります。
放射線白内障は、手術だけが治療とされ、手術を予定していて手術前であることが条件とされています。
医師の判断も重要
原爆症認定申請には、次の書類が必要です。
- 「認定申請書」と原爆が病気などの原因になっていることを証明する申請者の陳述
- 「意見書」(医師記入)
- 申請する病気の証明になる検査結果報告票のコピー
とくに、医師の意見書や検査結果のデータなどは「要医療性」の審査に影響します。
これらの提出先は都道府県(広島市・長崎市)ですが、そこから申請者の被爆者手帳申請時の書類のコピーを添付して厚労省に送られます。そのため、審査結果が出るまで3カ月から半年程度かかることがあります。認定されると申請した月の翌月に遡って医療特別手当が支給されます。
申請に当たっては、ぜひ東友会に相談してください。
医療特別手当の更新に注意
更新の期間
- 一般的に申請した年から3年ごと
- 白内障だけは申請した年の翌年
更新が必要な場合
3月中に東京都から申請書と診断書の用紙が届きます。(東京以外は、各道府県または広島市・長崎市)
5月末までに申請書、診断書と医療特別手当証書を提出します。
被爆者および家族の方は、東京都から届く郵便物に注意してください。更新手続きをしないと、医療特別手当の支給が止まることがあります。
東友会は、東友会を通じて原爆症認定申請をした被爆者のカルテを、電子データにして大切に保存しています。経過がわかるので更新手続きも円滑にお手伝いできます。東友会に相談して認定された方は、お問い合わせは東友会まで。