被爆者相談所および法人事務所
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被爆二世の制度について 「医療費助成」は東京都の独自施策

 「都外に引っ越したら医療費の助成が受けられなくなりました」という相談がときどき東友会に寄せられます。ときに、「何で東京の被爆二世だけ、医療費がタダになるのですか。おかしいですよ」とお叱りを受けることも。そこで、東京の被爆二世の施策が生まれたいきさつをお知らせします。

被爆者の制度と二世の施策は異なる

 まず最初に、被爆者の制度がそのまま被爆二世に当てはまるものではないことに注意してください。被爆者と被爆二世の制度・施策には、根本のところで大きな違いがあります。その内容を以下にまとめました。

被爆者と被爆二世の制度・施策のあらまし
原爆被爆者 被爆二世
制度の根拠
「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」
国の法律によって定められ、国の予算措置がとられている、国の制度。
  条例その他によって追加措置を設けている都道府県あり。
「被爆二世健康診断調査事業実施要綱」
法律はないが、行政の事業として定められ、国の予算措置がとられている行政施策。
  条例その他によって追加措置を設けている都道府県あり。
実施主体
制度の窓口と実施は都道府県(および広島市、長崎市)ごと
医療特別手当の認定審査は国の所管。
事業の実施は都道府県(および広島市、長崎市)ごと
資格の名称
「被爆者健康手帳」(全国一律)
都道府県ごとに異なる
県によっては「二世手帳」という名称のところもあるが、東京都では「健康診断受診票」という名称。
対象
「被爆者健康手帳」を申請して取得した人
被爆の事実があっても、「被爆者健康手帳」を取得していなければ、被爆者の制度は使えない。
「被爆者健康手帳」を持っている人の実子(胎内被爆者は除く)で、都道府県に申請して資格を得た人
東京都では、親が被爆していても「被爆者健康手帳」を取得していなければ、その子は「健康診断受診票」を受けられない。
おもな制度内容
無料の健康診断(がん検診含む)、被爆者の諸手当の受給
  独自の追加措置を取っている都道府県あり。
東京都では、検査項目の追加、「介護手当」の加算など。
無料の健康診断および多発性骨髄腫の検査
  独自の追加措置を取っている都道府県あり。
東京都では、「がん検診(男性3種、女性5種)」、「医療費助成」を追加。
備考
あくまで「被爆者健康手帳」所持者に対する制度
「葬祭料」も例外ではない。ただし、本人が死亡しているので、通常は社会通念上の「喪主」となる人が代表して申請・受給する。
「介護手当」も含めて、家族・遺族に対する制度ではない点に注意。
あくまで「被爆二世健康診断調査事業実施要綱」の一環としての事業
被爆者本人のような援護制度としての位置づけではないことに留意。

東京では独自に運動して都条例を勝ち取った

 被爆二世の医療費を東京都に要求していく東友会の運動は、被爆25年から30年に日本被団協がすすめていた国家補償の被爆者援護法制定要求の大運動とともにすすめられました。当時は、市民団体と日本被団協が2000万人分を目標に被爆者援護法制定国会請願署名を大きく広げ、厚生省の前にテントを張って連日座り込む、国会に年何度もデモ行進をおこなうという行動を積み上げていました。
 被爆者援護法要求で要求してきた被爆二世の制度を東友会が東京都に要求したのは、国が二世の施策に手をつけようとしなかったからでした。この運動から半世紀が過ぎた今、当時のことを知る東友会役員はすべて他界しました。

 当時の「東友」などから、この運動の流れを整理すると

  • 1971年2月 東友会、二世に関する調査報告を発表。
  • 1971年10月 東友会、初めて二世施策を東京都に要求。
  • 1972年11月 東京被爆二世の会発足。(80年頃から休会)
  • 1974年4月 都予算で二世健康診断が実現。
  • 1975年10月 都議会が被爆者援護条例可決。しかし、新しい施策は盛り込まれず。
  • 1976年7月 二世施策を求める都議会での審議で都議が「被爆者を絶滅させる方法はないか」と発言。全国的な抗議が起き、当時の東友会事務局長が都議会で発言。
  • 1976年10月 都援護条例の付帯決議として二世医療費助成を盛り込ませ、450人分約900万円の予算を獲得。

 このとき成立した制度は、基本的に現在も同じ内容で、(1)被爆者の「健康管理手当」に該当する障害の疾病の治療に、(2)半年以上必要と医師が判断した(診断書を書いた)場合に限られます。
 現在、東京都が被爆二世の「医療費助成」を認めている障害・疾病の範囲は以下に示したとおりです。

被爆二世の医療費助成の対象になる11種類の障害とおもな病名

  1. 造血機能障害:鉄欠乏性貧血、再生不良性貧血、血小板減少症、白血球減少症など
  2. 肝臓機能障害:アルコール性・ウイルス性を除く慢性肝炎、肝硬変など
  3. 細胞増殖機能障害:すべての悪性新生物(各種のがん、白血病、悪性リンパ腫など)。脳腫瘍は良性でも可
  4. 内分泌腺機能障害:糖尿病、橋本病、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、甲状腺機能亢進症など
  5. 脳血管障害:脳出血、くも膜下出血、脳梗塞など
  6. 循環器機能障害:高血圧症、高血圧性心疾患、狭心症、心筋梗塞など
  7. 腎臓機能障害:慢性腎炎、ネフローゼなど
  8. 水晶体混濁による視機能障害:先天性・糖尿病性を除く白内障のみ
  9. 呼吸器機能障害:慢性間質性肺炎、肺気腫、肺線維症など
  10. 運動器機能障害:変形性脊椎症、変形性関節症など
  11. 潰瘍による消化器機能障害:胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎など

いまある制度の活用だけでなく改善充実も

 東京都における被爆二世への「医療費助成」は、緻密な調査結果に基づき、被爆者・支援者が展開した大きな運動の成果で実現した施策であることを知って、全国的にも稀なこの「医療費助成」をぜひ活用すべきと考えます。
 もちろん、現行の被爆者の制度も、原爆症認定の厳しさなど様ざまな問題点があり、被爆の実情と被爆者の現状に見合った改善が求められます。全国的な被爆二世の制度・施策の改善についても、二世自身の運動が必要です。